バレーボールPRESSBACK NUMBER
脱・塩対応? 古賀紗理那が笑顔の理由「今、バレーボールがホントに面白くて。いくらでもしゃべりたい」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYukihito Taguchi
posted2021/03/10 17:02
NECを牽引した古賀紗理那(24)。日本代表としても大きな期待を寄せられている
チームの「軸」に成長した古賀
成長を遂げたのはプレーだけに限らない。
昨季の8位から3位へ順位を上げた今季のNECで、コートの中やタイムアウト時、積極的に声を出す姿が目に留まった。チームがどう戦うべきか――その方向性を自ら示す。古賀は紛れもなく揺らがぬ軸となり、リーダーだった。
「練習が終わった後も必ずその日の振り返りをする中で、どんなに細かいことでも気づいたことは言うようにしてきたんです。たとえば、トータルディフェンスを磨きましょう、ブロックとレシーブの関係を高めましょうと言っているのに、何でもかんでも全部『お願い!』じゃダメ。ブロックお願い、の前にレシーブで頑張る。レシーブ頼んだ、の前にブロックで跳ぶべきコースに跳ぶ。それから『お願い!』だよね、とか。当たり前のこともその都度伝えてきました。
その作業って、試合でいきなりできることじゃないと思ったんです。私自身、決勝とか全日本とか、いい時ばかり連絡してきたり、近寄ってくる人が好きじゃないから、大事な時に『ここが勝負だよ』という言葉が、みんなに響くように。そのためには普段から周りを見て、伝え続けることが大事だと思ったんです」
「私には私のやり方があるんじゃないかな、って」
プレーだけでなく、勝つために周りをどう動かせばいいか。実戦形式の練習では常に相手ブロックやレシーバーの位置を確認し、相手ブロックが1枚なのに決めきれないミドルブロッカーに対しては「そこが通らないとサイドがきつい。何とか決めてほしい」と伝える。一方ではセッターにも「ブロックが来ていないから、今はこのままクイックを通し続けたほうがいい」と助言し、自身に対しても「短くてもいいから浮かないように、一定のテンポで上げてほしい」と求め、互いのタイミングが合うまで何度も練習を重ねた。
大事な勝負所で後悔しないために、今できることをやり抜く。その結果、目指したリーグ優勝はかなわなかったが、新たな覚悟が古賀に芽生えた。
「(木村)沙織さんのように、苦しい時に全部決められる存在になりたいけれど、私には私のやり方があるんじゃないかな、って。全体を動かして、コントロールしながら、『勝負所は私に持ってきて』と言える働きをする。それが今季のNECではできていたと思うので、これからは日本代表でも同じようにやりたいし、やらなきゃいけないと思うんです」