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脱・塩対応? 古賀紗理那が笑顔の理由「今、バレーボールがホントに面白くて。いくらでもしゃべりたい」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYukihito Taguchi
posted2021/03/10 17:02
NECを牽引した古賀紗理那(24)。日本代表としても大きな期待を寄せられている
「不満」の矢印の向きが変わった
16歳で日本代表候補に初選出された2013年以降、次世代を担う日本代表のエースとして高い期待を寄せられてきた。だが、16年のリオデジャネイロ五輪は最終選考で落選。18年の世界選手権ではエースにふさわしい活躍を残すも、19年のW杯は控えに甘んじた。
「1、2本スパイクが決まらないと代えられるから不満しかなかったです。『こんなに突然代えられるならもう無理』と正直思っていたし、そんな選手、チームからすれば何があっても代えられない存在にはなれない。結局自分が中途半端だったんだと思います」
自分が為すべきことが明確になった今、不満ばかり抱いた頃は外に向けていた矢印も、向かう先が違う。
「やるべきことをやって勝ちたい。自分が活きるためだけじゃなく、チームが勝つためにこうしたほうがいいと思えばセッターにも要求するし、ここ、という勝負所では『このテンポで私に持ってきてくれたら、絶対に決めます』と言い切りたい。“私がエースだ”とは言わないけれど、自分ではそう思っているからコートで結果を出したいし、やるだけやって(メンバーから)外されるなら仕方ない。迷わず、そう言い切れるようになりました」
「バレーをやりたいと思う子が減るのはよくないので」
人見知りを楯に、試合後の取材対応はとても淡泊で、記者泣かせな選手でもある。しかし、今季好調の理由や成果、これからに向けた決意表明を細かく説明する古賀は実に饒舌で、1時間に及ぶ取材を終えても「まだ話し足りない」と笑っていた。
「高校の頃から取材していただく機会が多かったのは、今思えばありがたいんですけど、でも明らかにこれを言わせたいんだな、と伝わってくるのが嫌だったんです。リオ(五輪)の翌年は特にそうで『落選した悔しさが糧になりましたか?』とか、そればっかり(笑)。でも、バレー人気を考えたら少しぐらい嫌なことを聞かれても、絶対ちゃんとしないとダメですよね。自分のせいでバレーファンが減ったり、バレーをやりたいと思う子が減るのはよくないので、塩対応と開き直らず(笑)、もうちょっと頑張ります」
苦手克服はプレーのみならず。エースの自覚がこんなところでも芽生えたのかと思いきや、理由はもっとシンプルだった。
「とにかくバレーが大好きで。だから、もっとバレーボールの話がしたいし、聞いてほしいんです」
今が一番、バレーボールが楽しい。揃った歯並びを見せるかのように、口をニカッと開けた、輝く笑顔が何よりの証明だ。