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今の錦織圭ならジョコビッチやナダルと「多少はやれる」 突然“ショット感覚の復活”が訪れた理由 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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posted2021/03/09 06:00

今の錦織圭ならジョコビッチやナダルと「多少はやれる」 突然“ショット感覚の復活”が訪れた理由<Number Web> photograph by Getty Images

ロッテルダムで挙げた2勝は、錦織圭にとって大きなプラスとなったようだ

2019ウィンブルドン以来の準々決勝

 その2日後、ツアーとしては2019年ウインブルドン以来となる準々決勝を迎えた。

 今度の相手は世界26位のボルナ・チョリッチ。サーブが強力で、2回戦まで1度もサービスゲームを落とさず勝ち上がるなど調子も良さそうだった。この試合、錦織は2度のタイブレークを落としてストレートで敗れることになる。

 2セットとも互いにピンチを何度もしのぎながら、各セット1度ずつ相手のサービスをブレークする一進一退の展開。タイブレークに強い錦織も、この日は勝負どころで相手の好調ぶりに押されてしまった。

 ただ、どちらに転ぶか分からないタイブレークを落とすのは仕方がない面もある。それよりもったいなかったのが2箇所あった。まずは第1セットで第5ゲームをブレークし、優位に立った直後にブレークバックされた場面。もう1つは第2セット第1ゲーム。攻め急いでミスを重ね、いきなりサービスを破られて追う展開になったこと。どちらも集中し直さなければならない場所でギアが上がらず、主導権を握れなかった。

強者としての立場で臨んで縮こまった

 2回戦までとの違いはどこにあったのか。勝つために足りなかった部分を問われると、再び意外な言葉が飛び出した。

「(2回戦までの)2試合が良かったので自分に対しての期待感もあり、勝ちたいという気持ちが前に出たので硬くなった。振り切れなかったり、自分から打てなかったりというのが出たので、気持ちの面でいい状態ではなかったと思います。チョリッチもトップ10の選手ではないので勝ちたかったし」

 挑戦者ではなく、強者としての立場で臨んだことで縮こまったと自己分析していた。

 ただこれは、2回戦までの内容が、いかに自信を取り戻させていたのかが分かるコメントだった。

 約2週間もホテルの部屋で完全隔離生活を送った後に臨んだATPカップで世界4位のダニル・メドベージェフにストレートで敗れた際、「100位くらいの選手とやれたらよかった」と言っていたのは、ほんの1カ月あまり前。この日の錦織にとって、世界26位は勝たなければいけない相手に変わっていた。

【次ページ】 ナダルやジョコ相手でも「多少はやれる」

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