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なぜBIG3はグランドスラムで“異様に強い”のか… 33歳ジョコビッチがふと漏らした本音【全豪9度目V】
posted2021/02/22 17:02
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
全豪オープン男子シングルス決勝でノバク・ジョコビッチに敗れたダニル・メドベージェフが発したのは、あきらめにも近い言葉だった。
「彼の出来は確かに良かった。僕は間違いなくもっとうまくできたはずだ。でも、もっとうまくできたとしても、スコアが変わるわけじゃない。だから……、今日はこのスコアになった。僕は敗者に、彼は勝者になった」
直近の対戦、昨年のATPファイナルズのラウンドロビン(1次リーグ)ではメドベージェフが6-3、6-3で勝ち、勢いに乗って大会を制している。対戦成績も決勝前の時点でメドベージェフの3勝4敗と拮抗し、2019年以降に限れば3勝2敗と勝ち越している。四大大会初タイトルの期待を胸に、2連覇中の王者に挑んだが、1セットも取れずに敗れた。ジョコビッチには四大大会では19年の全豪に続いて2連敗となった。
「彼と対戦した過去の試合を考えれば、もっといいプレーができたと思う。でも同時に、それらの試合では彼の調子が良くなかったのではないかという疑問もわいてくる」
ジョコビッチの強さ、特に四大大会での尋常でない強さに、メドベージェフは困惑している様子だった。
メドベージェフも悪くない試合だったはずが
開幕時点で世界ランキング7位のアンドレイ・ルブレフに快勝した準々決勝、同5位のステファノス・チチパスを圧倒した準決勝と同等とまでは言わないが、メドベージェフは決して悪くない試合をしていた。それでも、ジョコビッチは容易にゲームを与えてくれなかった。盤石のプレーは、例えば第3セット第7ゲームに凝縮されている。2セットを続けて落としたメドベージェフが最後の抵抗を試みた場面だ。
ゲームはジョコビッチの意表を突くサーブ&ボレーから始まった。メドベージェフもバックハンドのウィナーとフォアの逆クロスで応酬、30オールになった。ここでメドベージェフは渾身の力を込め、立て続けに2本、フォアの逆クロスを放つ。ところがジョコビッチは正確なフットワークで対応、逆にベースラインぎりぎりにバックハンドをねじ込んだ。