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今の錦織圭ならジョコビッチやナダルと「多少はやれる」 突然“ショット感覚の復活”が訪れた理由
posted2021/03/09 06:00
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph by
Getty Images
「その時」は突然訪れた。3月1日のABN・AMROワールド(ロッテルダム大会)1回戦。錦織圭は世界ランキング19位で第7シードのフェリックス・オジェアリアシムを7-6、6-1で下し、昨年の全仏オープン以来、実に5カ月ぶりとなるツアー勝利を挙げた。相手は2019年からツアー大会で7度も準優勝している20歳。勢いのある若手から奪った白星だけに、価値は大きかった。
「その時」というのは、久々の勝利のことではない。錦織が求めていたショットの感覚が、ようやく戻ってきたのだ。
「何となくこう、ボールが入る気がした」
「(復帰後は)一番良かったと言える試合だったと思います。正直、練習ではあんまり良くなかったんですけど、試合に入って本当に突然ですね。何となくこう、ボールが入る気がしたのと、すごく落ち着いて今日はプレーできたかなと思います」
この試合で、錦織は右肘手術や新型コロナ感染から復帰した昨年9月以降では最高のプレーを続けた。まずは、肩への負担を減らすようフォームを改良中のサーブ。時速180キロ前後とスピードもまずまずの第1サーブを多用し、高い精度で相手を苦しめた。パブロ・カレニョブスタにストレートで敗れ、初戦で姿を消した2月の全豪オープンと比較し、「一番の違いはサーブが良かった」と話した。
サーブがいいから、ストロークのリズムも良くなる。左右に打ち分けてコースを突き、相手にブレークポイントを握られたのは1度だけ。そこもしっかりセーブした。第1サーブが入った時のポイント獲得率は85%をマーク。アンフォーストエラーも少なかった。第2セットは相手が序盤から脚を気にし始めて動きが落ち、ほぼ錦織の一方的な展開となった。
第1セットのタイブレークでは見事なリターンエースで先手を奪い、美しいバックのダウン・ザ・ラインも見せた。試合後、どのプレーが気に入っているかを尋ねると、意外な答えが返ってきた。