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【全治8カ月の大ケガ】“全部60点”から「すぐにスコアする男」に大変身、大阪エヴェッサ・橋本拓哉の復活劇を待て
posted2021/03/06 17:01
text by
カワサキマサシMasashi Kawasaki
photograph by
B.LEAGUE
アクシデントが発生したのは、本稿のオリジナルを書き上げてから数時間後のことだった。
大阪エヴェッサの橋本拓哉は、今季シックスマンとして覚醒。しかし2月3日の信州ブレイブウォリアーズ戦中に避け難いアクシデントに遭遇し、右アキレス腱を断裂。全治8カ月の診断が下され、今季の復帰は絶望的となった。
開催はされなかったものの、FIBAアジアカップ2021予選の日本代表候補にも選出されていた有望選手。復活への期待を込めて、覚醒の理由を検証したい。
橋本はbjリーグ時代の2012-13シーズンに、高校に在籍したまま17歳でプロデビューして話題を集めた。1シーズン限りで退団したあとは芦屋大に進み、2016年のBリーグ開幕と同時に大阪に復帰。bjリーグ時代も含めると、今季がプロ通算6シーズン目となる。
復帰当初はスターター出場の機会も多く、190cmの高さと運動センスに着目した当時の首脳陣は、ポイントガードとして育てようともしていた。しかし経験不足もあり、見せた内容は司令塔の任を充分に果たせていたとは評価しづらい。どの試合でも20分ほどコートに立って、1試合平均得点が5~7点程度とさしたるインパクトはなかった。
「全部が60点」の選手が起用方法で見違える
そんな彼の方向性を定めたのが、現在のチームを指揮する天日謙作ヘッドコーチ(HC)だ。天日HCはbjリーグ時代に3連覇を達成した大阪の初代HCであり、その後は芦屋大での指導などを経て、2019-20シーズンに大阪に復帰した。
天日HCが西宮ストークスを率いていたころに、筆者との雑談のなかで橋本についての話題になったことがある。そこで天日HCは彼のプレーを、「いろんなことができるけど、全部が60点くらい」と評していた。大阪で再び指揮を執るにあたって「全部が60点」の選手に与えた役割は、シックスマンとして出場し、スコアすること。あえて求める仕事をシンプルにした理由を天日HCが説く。
「HCによって見方が違うと思いますが、僕は彼が1番ポジションの選手だとは、まったく考えたことがありません。それは彼のためにならないと思っています。どの選手に対してもそうですが、彼も彼のいちばんいいところが出るようにしたい。いろいろなことをやってもらうより、ひとつのことに絞ったほうが彼のためになると思ってのことです」
芦屋大時代も橋本を指導し、彼のことをよく知るがゆえ、天日HCは求めるプレーを限定的にした。橋本はこの役割を与えられた昨季、得点力が飛躍的に向上した。1試合平均得点は10.5、3P成功率はリーグ4位の41.1%。さらに今季は1試合平均得点13.5、3P成功率42.6%と伸ばし、2月13日の富山グラウジーズ戦ではキャリアハイの34得点をマーク。シーズン終了後に選定される、ベスト6thマン賞の有力候補のひとりと目されるまでになった。
冒頭で記したように、途中出場でコートに立った橋本が最初に狙うのは3P。その理由を本人はこう語る。