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レブロン相手にも堂々…称賛される八村塁のディフェンス能力「1番から5番まで守れるのは塁、お前だけだ」
posted2021/03/10 11:01
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
それは2月半ば、ワシントン・ウィザーズがニューヨーク・ニックスに敗れた翌日のことだった。
この時点でウィザーズの成績は6勝17敗でイースタン・カンファレンス最下位。プレイオフ進出を目標にシーズンをスタートしたチームにとって予想外の低迷だった。途中、新型コロナウイルス感染でチームの活動が中断した影響があったとはいえ、全員がラインナップに戻っても勝利につながらないことに、チーム内外には危機感が漂い始めていた。巷では、ヘッドコーチのスコット・ブルックスの声が選手に届かなくなったのではないか、そろそろ首も危ないのではないかと噂されるようになったほどだ。
そんな中、チーム練習前のミーティングで、ベテラン・リーダーのひとり、ラッセル・ウェストブルックが若いチームメイトたちに、「それぞれ、このチームでの自分の役割が何なのかを話してみろ」と言った。それぞれがやるべきことを自覚し、チームメイトと共有することで、責任意識を強くするというのが狙いだったようだ。
「1番から5番まで守れるのは塁、お前だけだ」
ウェストブルックの問いかけに対して、八村は「自分はディフェンスで1番(ポイントガード)から5番(センター)までを守ることと、オフェンスで積極的に行くこと」と答えた。
特に新しいことを宣言したわけではなかった。八村自身も以前から幾度となく、「自分はガードもビッグマンも守れる」と言ってきていた。大学のときも、ガードの選手が相手でも守れるとコーチから認められ、そのことを意識するようになっていた。
しかし、口でそう言うことと、実際に試合でやることは別物だ。その素質があることと、NBAの試合で求められるレベルで毎試合やってみせることもまったく別物だ。だから、この八村の言葉に対してウェストブルックやブラッドリー・ビールらベテラン選手は「そう言うなら、そのディフェンスをコートの上で見せてみろ」と八村にチャレンジした。八村にできるかどうか疑問に思っていたわけではなく、できると信じているからこそのチャレンジだった。実際、ウェストブルックはシーズン序盤にも八村に対して、「このチームで1番から5番まで守れるのは塁、お前だけだ」とハッパをかけていたのだ。
宣言し、それに対して挑まれた八村は、責任の大きさを感じていた。
「僕も言ったからにはやらないといけないですし、チームとしても、僕のディフェンスがどれだけ必要か、チームのディフェンスにとって僕が鍵になっていると言われている。そういうプレッシャー、逆に言ってみればチームから大事な役割をやるように言われているのは本当に光栄なこと」