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伝説の10.8決戦(巨人対中日)で廃駅に? 名古屋の“消えた野球駅”「ナゴヤ球場正門前駅」、今は何がある? 

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鼠入昌史

鼠入昌史Masashi Soiri

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posted2021/03/03 17:03

伝説の10.8決戦(巨人対中日)で廃駅に? 名古屋の“消えた野球駅”「ナゴヤ球場正門前駅」、今は何がある?<Number Web> photograph by KYODO

1994年、伝説の10.8決戦で中日に快勝。4年ぶりにリーグ優勝を決め、胴上げされる巨人・長嶋監督(ナゴヤ球場で)

 ……そう、その最終戦はあの10.8決戦である。シーズン最終戦の直接対決を残して中日と巨人がまったく同率首位で並び、勝ったほうがリーグを制覇する天下分け目の大決戦。試合は巨人が槙原・斎藤・桑田の3本柱継投と落合と松井のアベックホームランなどで中日を退けて優勝を飾った。関東地区の視聴率はなんと48.8%を記録したという。巨人の長嶋茂雄監督はこの試合を「国民的行事」と呼んだとか。まあ、阪神ファンの筆者にすれば何が国民的なのかわからないし、むしろ阪神ファンは非国民なのかと思ったものだがそれは別のお話である。

 とにかく、この10.8決戦の裏側で、密かにナゴヤ球場正門前駅は最後の営業日を迎えていたのである。もちろん、中日が勝利して日本シリーズに進出すれば日本シリーズでもナゴヤ球場正門前駅は営業される予定だった。けれど、結果は巨人のV。あえなくナゴヤ球場正門前駅はこの日をもって“廃駅”になったのである。伝説の10.8決戦はセ・リーグの覇者を決める天王山だったと同時に、ナゴヤ球場正門前駅の命運をも決める試合でもあったのだ。ナゴヤ球場正門前駅、忘れさられてしまうにはあまりにも寂しい。

 ちなみに、ナゴヤ球場と新幹線を巡る物語はもうひとつ。1973年、V9最後の年のことだ。その年は巨人と阪神がデッドヒート。甲子園での直接対決最終戦を前に、ナゴヤ球場での中日戦に勝つか引き分ければ阪神が優勝するという展開になった。その試合は結局中日が勝って甲子園での最終決戦にもつれたのだが、ちょうど試合中に巨人の選手たちが甲子園遠征のために新幹線でナゴヤ球場の横を通過したという。その時、車窓からちらりとみえたスコアボードは4−2で中日のリード。お通夜ムードだった車中は一気に盛り上がり、そのまま翌日の勝利につながったのだ……とか。

 やっぱり、車窓から見える野球場にはドラマが詰まっているのである。ま、阪神が負けたエピソードなんてどうでもいいんですけどね。

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