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伝説の10.8決戦(巨人対中日)で廃駅に? 名古屋の“消えた野球駅”「ナゴヤ球場正門前駅」、今は何がある? 

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鼠入昌史

鼠入昌史Masashi Soiri

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posted2021/03/03 17:03

伝説の10.8決戦(巨人対中日)で廃駅に? 名古屋の“消えた野球駅”「ナゴヤ球場正門前駅」、今は何がある?<Number Web> photograph by KYODO

1994年、伝説の10.8決戦で中日に快勝。4年ぶりにリーグ優勝を決め、胴上げされる巨人・長嶋監督(ナゴヤ球場で)

 この時期、実はまだ尾頭橋駅は存在せず、ナゴヤ球場へのアクセスは名鉄のナゴヤ球場前駅(現・山王駅)だけが担っている状況だった。ナゴヤ球場は収容人数も少なく、それでも充分だったのだろう。だが、1987年には落合博満もロッテから中日に移籍して注目を集めており、JR東海にしてみれば「中日人気が高まる中で球場への輸送も担えば儲かるんじゃないか」と目論んだのだろう。開業当時のダイヤは試合開始前には5本、試合終了後には帰宅客のために9回表くらいから10分間隔で列車を走らせていたという。

徒歩10分…さらに新駅(尾頭橋駅)が出来た理由

 ナゴヤ球場正門前駅の跡地の踏切から新幹線のガードをくぐってナゴヤ球場まではものの1分。それだけの近さだから、ナゴヤ球場正門前駅は実に便利な駅として評判になった。特に、地元の人たちにしてみれば野球場のために突如駅ができたが、臨時駅なので普段は営業していない。どうせならば常設の駅として通年営業してくれればいいじゃないかと思うのもごく自然の成り行きだろう。そこで地元の人たちはJR東海に対して駅の常設化を求めたのだが、そうもいかない事情もあった。

 この貨物列車のための線路は、名古屋の中心地を走っているにも関わらず非電化の単線だった。なので、電車をそのまま乗り入れさせるわけにはいかず、わざわざ他の路線で使っていたディーゼルカーを持ってきて走らせなければならなかったのだ。さらに、線路そのものを所有しているのはJR貨物。JR東海は使用料を支払って、ナゴヤ球場正門前駅の臨時営業を行っていたのである。そうした駅を常設化するのはいささか無理がある。

 というわけで、JR東海は近くを通っていた東海道線に新駅を開業することにした。それが、現在の尾頭橋駅である。尾頭橋駅からナゴヤ球場までは、実際に筆者がたどったように少し歩かなければならない。とはいえ、ものの10分程度なので野球観戦のお客にすればたいした問題にはならない。その上、地元の人たちはますます便利になって喜ぶし、なにより近くにはウインズ名古屋もあるから競馬ファンの利用も見込むことができる。……といった深慮遠謀のもとに、ナゴヤ球場正門前駅を置き換える形で尾頭橋駅が開業したのだ。1995年3月16日のことであった。

 そんなわけで、ナゴヤ球場正門前駅はいつの間にかひっそりと廃止されてしまった。ただし新しい尾頭橋駅がナゴヤ球場最寄り駅として一軍の試合観戦に訪れるお客をさばいていたのもわずか2年。1997年にドラゴンズの一軍本拠地がナゴヤドームに移転してしまうと、尾頭橋駅はすっかりウインズ名古屋専用のような駅になってしまったのである。

伝説の10.8決戦が最終営業日だった!

 そんな、とりたててたいしたドラマもなさそうなナゴヤ球場正門前駅と尾頭橋駅の物語。ナゴヤ球場正門前駅の最後の営業は、1994年10月8日の中日対巨人のシーズン最終戦であった。

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