炎の一筆入魂BACK NUMBER
「ビジネス書を読破してキャンプイン」カープ新加入のクロンって? 鈴木誠也をひたすら観察して…
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2021/03/03 17:02
新外国人選手でただ1人、春季キャンプに参加した広島ケビン・クロン
「リーグの中でも素晴らしい打者として知られる選手が同じチームにいるので、彼の打撃を見て自分も学ぶことがあるのではないかと思った。実際に見て、体のバランス、下半身の使い方は素晴らしい。自分に取り入れられるかは分かりませんが、いい打者のいいところを見て、自分も勉強していくことは必ず役立つんじゃないかな」
習慣は環境と結びついている。練習量の多い広島キャンプは、日本を代表する打者がいたこともあって、新しい習慣を身に付けやすい環境だったといえる。実際、米国時代と同じフロントティーを継続しつつ日本式の打撃練習を加えたことで、日本式が受け入れやすくなったという。
「4番」や「本塁打量産」には興味ない
クロンは米国時代から長距離砲として将来を期待された若手有望株の一人だった。19年には3Aでリーグ最多38本塁打を記録している。打率3割3分1厘、105打点、OPSは1.226という好成績も残した。一方で、これまでの「将来性あるパワーヒッター」や「有望な若手選手」という自らのアイデンティティーを、「広島の勝利に貢献できる選手」に転換したいと考えているようだ。
「アメリカでも日本でもパワーヒッターには変わりないけど、そこから勝者は何をするかと考えて、しっかりとした準備ができれば、チームを勝利に導ける選手になれるはず。だから、自分がどういう選手なのかを考えて取り組むことを大切にしたい」
「4番」や「本塁打量産」などには興味を示さない。日本で成功するという「ゴール」に目を向けるのではなく、あくまでもプロセスに主眼を置く。だからこそ、クロンは日本式の長い練習時間の中にある小さな習慣も継続できるのだろう。
打撃コーチと2時間以上話して見えたこと
一方で日本球界への適応のためと、昨年ほとんど実戦に出ていないことを考慮され、キャンプ期間中の実戦では積極起用されたが、対外試合では思うような結果は出ない。今年初の対外試合となった16日ロッテとの練習試合から20日ヤクルトとの練習試合まで12打席連続無安打。調整段階とはいえ、結果が出ないと焦りが生じる。5打数無安打3三振で終えた20日ヤクルト戦のベンチでは落ち込んでいる様子もうかがえた。焦りはフォームを崩す一因となり、打ちにいく際にテークバックを取ったグリップの位置が緩むことで、力強さが軽減されてしまっていた。悪い習慣は改善しなければいけない。
20日夜、クロンは通訳を介して迎祐一郎打撃コーチと2時間以上、話し込んだという。翌21日の試合前練習では、朝山東洋打撃コーチから付きっきりの指導を受け、ここでもお互いの意見交換に時間を使った。
「今は、結果は気にしていない。自分のスイングをしてくれればいい」
「一番いけないのはヒットを欲しがって小さくなること」