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リーチマイケルも「やっとフェアな状態で戦える」 2023W杯“試合間隔変更”で最も恩恵を受けたのは日本? 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNaoya Sanuki

posted2021/03/03 17:00

リーチマイケルも「やっとフェアな状態で戦える」 2023W杯“試合間隔変更”で最も恩恵を受けたのは日本?<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

2023年ラグビーW杯フランス大会の日程発表を受け、「いろいろなチームに勝つチャンスが出てくる」とポジティブなコメントを残したリーチマイケル

アイルランド戦の再現を狙いたいが…

 また、本番では相手国から見た対戦順という要素も絡んでくる。日本から見て最強の敵であるイングランドは、日本戦に先立ち初戦でアルゼンチンと戦う。イングランドから見れば、フィジカルの強いアルゼンチンとのタフな戦いを強いられた次に迎えるのが日本戦だ。消耗してくる部分はあるだろう。

 実際、19年大会ではアイルランドが初戦のスコットランド戦の次に迎えた日本戦にSOジョナサン・セクストン、CTBバンディー・アキらの主力を休ませて臨み、敗れている。日本にとってはその再現を願いたいところだが……藤井氏は苦笑した。

「そこはエディーさんがいろいろ考えてくるでしょうから、我々のアドバンテージになるとは考えていません。ただ、やる以上はもちろん勝ちに行く。前回も、日本がアイルランドに勝てるとは誰も思っていなかったと思うけれど我々は勝つつもりで準備して実際に勝った。今度はアイルランドよりも一段階レベルの高い相手ですが、日本として、勝利を目指して挑んでいきたい」

アルゼンチン戦が大一番となる理由

 逆に、プール戦最後の敵となるアルゼンチンは、イングランド戦、オセアニア、米大陸の代表と戦ったあとで、彼らにとってもターゲットであろう日本戦に臨むことになる。おそらくは両国にとって決勝トーナメント進出をかけた大一番になるだろう(ともにイングランドを破り、プール2位以上を決め全勝同士で対決する可能性もあるが……)。これも前回のスコットランド戦と同じ構図だ。前回大会ではスコットランドが前戦のロシア戦から中3日、日本はサモア戦から中7日と準備期間に差があったが、今回は日本が中9日でアルゼンチンが中7日。ともに休養十分で最終戦に臨むことになる。

 そう。ラグビーW杯では対戦順以上に試合間隔が注目されてきた。

 5チームによるプール戦を4週末で行うとなると、一部のチームにはどうしても中3日ないし中4日の強行日程の試合が組まれてしまう。そして、集客力のある伝統国には優先的に週末の試合が与えられ、しわ寄せは多くの場合非・伝統国の側にもたらされてきた。日本は前回大会こそ開催国特権ですべての試合が週末に組まれたものの、15年大会では南アとの初戦から中3日でスコットランド戦(しかも相手はそれが初戦だった)を戦わなければならなかった(そして、それが15年大会の日本代表唯一の敗戦となった)。

 だが今回は、主催者であるワールドラグビーが、日程発表に先立ち「すべてのチームの、すべての試合に中5日以上の間隔を開けて戦えるようにする」と発表。プール戦の期間をこれまでの4週末から5週末に拡大し、あわせて大会期間も1週間延長することを決めた。19年日本大会は9月20日に開幕して11月2日に決勝、大会期間は述べ44日間だったが、23年大会は9月8日に開幕して10月28日の決勝まで51日間という長期の大会となる。

 あわせて、大会登録選手枠も従来の31から33に拡大された。これらは、脳しんとう対策など選手の安全対策がより重視され、良いコンディションで試合に臨ませようというラグビー界、ひいては世界のスポーツ界の潮流に押されての改革だ。

 プラス面は選手の安全面だけにとどまらない。19年大会の日本代表は、対戦相手によって戦術を変えながら戦った。戦術の落とし込みには時間が必要だ。「最低でも中5日」のインターバルはどのチームにとっても朗報だが、最も恩恵を受けるのは日本なのかもしれない。

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