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「女性であることがコンプレックスだった」女子ラグビー代表選手がイギリスで気づいた“日本のスポーツ界の問題点”
posted2021/03/01 17:00
text by
吉田直人Naoto Yoshida
photograph by
Naoto Yoshida
「日本でプレーする中で生まれた問いを、イギリスで答え合わせしている感覚です」
15人制ラグビー女子日本代表の支柱として13年にわたりプレーしてきた鈴木彩香は、2020年11月にイングランド・Premier 15s所属のWASPS LADIESに加入。コロナ禍による制約や言葉の壁など不慣れな環境下、12月12日にはフル出場を果たした。
7人制でリオ五輪も経験し、競技歴20年を数える日本代表のCTBは、今年9月にニュージーランドで開催予定のワールドカップを競技人生の集大成と定める。セカンドキャリアとして志すのは指導者の道だ。
だが、英国に身を置くなかで、「プレーの良し悪しとは別の価値観に気づいた」とも話す。その気づきは、チームの強化という枠組みを超え、ラグビー界、スポーツ界を変えたいという思いにも繋がっていた。
「日本が勝つために必要なことは何か」即答で決まったイギリス行き
渡英のきっかけは唐突に訪れた。
昨年初め、15人制女子日本代表のレズリー・マッケンジーHCと話していた時だ。
「日本が世界で勝つために必要なことは何か」
そんな議論の中で、「海外に行ってみないか?」と提案された。
「行きます」
その場で即答し、鈴木の希望で渡航先は英国に決まった。これまで日本人選手の渡航先はオセアニア地域が主流。鈴木自身もニュージーランドへ留学経験があった。
だからこそ、欧州、とりわけ世界ランクトップのイングランドで挑戦したいと考えた。国際的な経験の蓄積が組織に化学変化をもたらすことは、前年のワールドカップで躍進を見せた男子日本代表の足跡からも明らかだった。
「日本の女子選手はまだ受け身の時が多い」
長く国内でプレーする中で視座も上がり、コーチングにも興味を抱くようになった。次第に自身の考えと、日本の女子ラグビーの現状がマッチせず、歯がゆさを感じることも増えていた。