松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
わずか3年で東京パラリンピック代表! パラ射撃界のニューヒロイン・水田光夏に松岡修造がほめられる
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2021/03/07 06:00
水田光夏選手と会って初めてビームライフルに触れた松岡さん。当初はまったく感覚がつかめなかったが……
鳥居:射撃のポイントは4つあります。(1)銃を動かさないで構える「据銃」、(2)正確にど真ん中に銃を向ける「照準」、(3)銃が動かないように引き金を引く「撃発」、(4)撃った後も銃を動かさない「フォロースルー」。特にエアライフルは引き金を引いてから空気が膨張して弾が出るまで0.2秒くらいかかる上に、弾が銃の中を通過する時間もあるので、フォロースルーでとにかく「動かない」という意識が大事です。
水田:私も鳥居コーチから、フォロースルーは今の射撃が良かったかどうか、自分のパフォーマンスに思いを巡らせる時間だと教わりました。
「ワルサー」と聞いて思わず歌い出す松岡さん
松岡:光夏さんはいつから鳥居コーチに教わっているんですか?
水田:最初からです。はじめは東京都が主催するパラスポーツの体験会みたいなところでビームライフルを体験して、そこで出会ったのが鳥居コーチでした。当時、私は17歳だったので、「銃の所持資格が取れる18歳になって、銃を持ったらまた来てね」と鳥居コーチに言われて、本当にそうしました。「鳥居さん、資格取ってきましたー」って。
松岡:そんな軽いノリですか? なかなか射撃のノリじゃないと思いますけど。ピンク色のジャケットっていうのも、ちょっと射撃のイメージじゃないというか。なぜピンクなんですか?
水田:もともと好きなんです。小物からちょっとずつ集め出して、気づいたらこんなにピンクの割合が増えちゃって。
松岡:車いすもピンク、靴もピンクで“全ピン”ですもんね。
水田:あと、黒とシルバーも好きなので、銃も黒とシルバーにしました。初めて銃を買いに行ったとき、性能のこととかよくわからなかったので、手に障害があっても弾を入れられると事前に聞いていたワルサーをくださいと店員さんに言ったら、「ワルサーもたくさん種類があります」って言われちゃって。何がなんだかわからなかったので色で選びました。
松岡:これ、ワルサーなんですか! ワルサーP38~♪ テレビアニメ『ルパン三世』のエンディングテーマ。知らないですか?
水田:まったく(笑)
松岡:差し支えなければ、おいくらくらいするんでしょう?
水田:50万円くらい。
松岡:道具でそんなにかかるスポーツってあります? 音楽ならわかりますけど、バイオリンとかね。
水田:そのかわり20年、30年と長く使えるし、パラリンピックみたいなレベルの高い国際大会でも使えます。
松岡:この射撃テーブルも自前ですよね?
水田:そうです。選手によって撃つときのスタイルや姿勢が違うので、それぞれ合ったものを作っています。
(構成:高樹ミナ)
#2 「昨日までのこともすぐ忘れる」難病発症の経緯さえも忘れちゃう水田光夏に修造が思わずツッコむ に続く
水田光夏(みずた・みか)
1997年8月27日、東京都生まれ。中学2年生の春、手足の神経が麻痺し筋力が低下する進行性難病のシャルコー・マリー・トゥース病を発症。19歳から本格的にパラ射撃に取り組み始め、17年の全日本選手権で初出場ながら2位入賞。19年世界選手権ではエアライフル男女混合10メートル伏射で24位になり、東京2020パラリンピック日本代表に内定した。19年から全日本選手権2連覇中。20年3月に桜美林大学を卒業。白寿生科学研究所所属。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。