野球のぼせもんBACK NUMBER
工藤公康も斉藤和巳も「カーブだけは別物」の深い意味 ホークスキャンプで1日150球カーブを猛練習したのは?
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2021/02/10 17:02
ソフトバンク宮崎キャンプ 。ブルペンで投球練習する高橋礼
「先発で長いイニングを投げる時にはカーブが大事になる。甲斐(拓也・捕手)さんからも『もう少しカーブを良くしてほしい』と言われていたし、昨年のシーズンが終わってからカーブを一番の課題にしていました」
もともと投げていた球種ではあった。以前のカーブは腕の振りや指先で操作していた。
「牧田さんから教わったのは『抜く』感覚を覚えること。ゴルフで例えるならばロブショットが理想形です。ボールの下を打って、振り抜かれたクラブの後にボールが出てくるような」
利点もある。
「抜くことで、腕の振りが速くても、ボールは遅いんです」
こちらの方が、打者が嫌がるのは明白だ。
2日間で250球の投げ込み「希少になった職人肌」
そして、キャンプ第2クールになると球数をしっかり投げ込んだ。初日に100球超、翌日には150球となかなかの数だ。投げ込みは悪との風潮もあるが、彼は自分にとって必要性があると感じたからマウンドで腕を振り続けた。また、アンダースローは特に下半身を中心に全身を使って投げるフォームだ。投げることが強化にもつながる。
「去年のキャンプで左太もも裏を怪我してしまい、筋力自体はすでに戻っていますけど、自分が思ったように自由に動かせていない感覚がありました。自分の意思との連動性を高めていきたい」
高橋礼の持ち味はアンダースローなのに速球派ということ。昨年は直球のスピードが物足りなかったが、キャンプではその感覚も取り戻しつつある。
私事だが、今年はプロ野球取材を生業にしてから20年目の球春だ。近年のキャンプで思うことがある。序盤から総じて選手たちの仕上がりが早い。
何かを試すより、実戦形式でのアピールを大事にする傾向が強い。定められた「枠」を争う世界だから決して悪いわけではないが、本来プロ野球界に多いはずの職人肌のプレーヤーが希少になっているような気もしてならない。
周囲など気にせずに己の道を突き進む。今時珍しくなったそんな選手を見つけると、つい気に留めてじっと視線を送りたくなってしまう。
今年のホークスキャンプでそれを最も感じたのが、高橋礼だったというわけだ。