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ギグス、フィーゴ…サッカー界の「ウイング」は死んだのか 39歳“最後の生き残り”ホアキンに聞く「今はパサーの時代だが…」 

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豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byGetty Images

posted2021/02/10 17:00

ギグス、フィーゴ…サッカー界の「ウイング」は死んだのか 39歳“最後の生き残り”ホアキンに聞く「今はパサーの時代だが…」<Number Web> photograph by Getty Images

今年7月に40歳の誕生日を迎えるホアキン・サンチェス

 まず、母国スペイン代表のサッカーが方向性を変えつつあった。06年W杯ではホアキンを招集したルイス・アラゴネス監督だったが、08年の欧州選手権を見据え、ポゼッション重視のサッカーに舵を切るようになる。

 かつてのスペイン代表はフリア(熱、怒り)と称されたように、どちらかというと勢いと気持ちの強さで勝負するスタイルだった。そのサッカーにウイングは不可欠だった。ホアキンに加え、アルベルト・ルケやビセンテ・ロドリゲスなど同世代の有望株はたくさんいた。

 しかし彼らは緩やかに表舞台から姿を消していき、そのかわりに足元の技術に長けたパサータイプの選手や、より中央でチャンスメイクできる選手が重宝されるようになる。イニエスタ、シルバ、セスク、カソルラらはその典型例だろう。ホアキンは当時を思い出す。

「2000年代中頃からかな。ウイングが少しずつ減っていき、今じゃ僕がサッカーを始めた頃にいたような、昔ながらのタイプはもういなくなってしまった。なぜだろう。僕らウイングの選手は何かできなかったのだろうか。でもね、それは仕方ないことでもあるんだ。僕はそう考えている。サッカーは移り変わる。少しずつ、それでも確実に。これは誰にも止められない宿命のようなものだ。昔のサッカーは今ここにはないし、今のサッカーだっていつまで続くかは分からないんだ」

「あともう少し、ホアキンと付き合ってくれ」

 ホアキンはウイングがウイングとして生きることのできる最後の時間を謳歌した選手のひとりだった。

「今後、どんなサッカーになっていくのだろう。昨季CLで優勝したバイエルンのようなサッカーもある。フィジカルを活かし、前の選手もプレスをかけ続けるサッカーだ。それが現代のサッカーのひとつだろう。そして今ウイングのポジションにいるのは、より器用な選手たち、どちらかというとパサーだ。今は中央から崩すのが中心で、時にサイドも使うという風に変わっている。やり方は変わる。でも、その中でも生きていくことはできる」

 ホアキンは時代の変化の波に飲まれ、消えることはなかった。それどころか誰よりも安定したプレーを続け、リーガ出場試合数でフィールドプレーヤーとしての新記録を樹立した。20年7月16日のアラベス戦、ホアキンはラウールが持っていたリーガ最多出場記録(550)を抜いた。現在は552試合となり、彼の前にいるのは622試合のGKアンドニ・スビサレタだけだ。カシージャス、シャビ、イニエスタらを大きくこえている。

「記録更新できたのは嬉しい。正直、39歳までプレーすることになるとは思わなかったから。あともう少し、ホアキンと付き合ってくれ」

 そう言ってホアキンは笑う。

乾が語る「ホアキンが39歳まで生き残ってきた理由」

 訪れたウイング消滅。消えていった選手もいた中で、なぜその代名詞であった彼は生き残り、長く第一線でプレーできたのか。

 一昨季、ベティスでホアキンと共にプレーした乾貴士に聞くと、その答えがおぼろげながら見えてくる。乾はベティスにいた頃、「ホアキンにサッカーを習いに来た」と言っていたほどの信奉者だ。

【次ページ】 ホアキンは取り残されたのではない

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