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田中将大と斎藤佑樹は何が違うのか 2度目の投げ合いで見えた“エースの差”とは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph bySANKEI SHINBUN
posted2021/01/29 06:00
高校時代からの“ライバル”田中(左)と斎藤(写真は2011年の初対決時)
ふたりのエースの明暗を分けた「間」の違いとは?
さらに、3回1死二塁で絶好調の稲葉を封じたことで田中は完全に勢いに乗った。
前の打席で7球粘られた末にタイムリーを許したことを教訓とし、カウント0-2から3球勝負に打って出た結果、内角の速球で見逃し三振に打ち取ることができた。
田中は、「嶋(基宏)さんが本当に考えて配球を組み立ててくれたので、それを信じて投げました」と女房役を讃えたが、それも田中自身が牽制球を通じて間を作り、相手に有効なリズムを与えなかったからこそ、だ。
4回以降、完全に立ち直った田中は、降板する8回まで2安打無失点に抑えた。これには、相手指揮官の栗山英樹も「本調子じゃなかったけど、田中は終盤でも『アクセルを踏もう』と思えばまだいけたからね」と脱帽するしかなかった。
斎藤にしても、7回途中2失点と敗戦投手にはなったものの最低限の役割は果たしたといえる。だが、栗山監督の話から察するに、やはり間の作り方こそがふたりの明暗を分けた、といえるだろう。
「佑樹は最悪の状態だった。だからこそ、『今日が大事だから』と言った。自分の球が投げられないときにどうするかがエース。ピッチャーのリズムが悪ければ野手のリズムにも繋がる。あれだけ佑樹が(悪い)間を作ってしまうと、野手もどういう守りをしなければならないのかが分からなくなってしまう。とにかく佑樹は反省しないとダメ」
「自分のことで精一杯でした」というふたりの言葉の意味は、異なる。
田中は自分の間をしっかりと作ることで、最少失点で切り抜けることができた。しかし斎藤は、「自分のことで精一杯でした」と言っていたように、牽制球を投じず楽天打線ばかりを意識してしまった。つまり、両者とも「自分のことで」と異口同音に唱えながらも、マウンドで見せたパフォーマンスは全く異なるものだった、というわけだ。
ふたりは初の開幕投手を務め、実質的なチームのエースとなった。だが、エースとしての資質を問われれば、やはり田中のほうが何枚も上手だった。