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田中将大と斎藤佑樹は何が違うのか 2度目の投げ合いで見えた“エースの差”とは?
posted2021/01/29 06:00
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
SANKEI SHINBUN
「正直、そんな余裕はありませんでした。自分のことでいっぱいいっぱいで」
斎藤佑樹との2度目の投げ合いとなった4月13日の日本ハム戦。楽天の田中将大は、試合前までの心境をこう吐露した。
昨年9月10日に斎藤とのプロ初対決を制し、シーズンでも勝利数、防御率、勝率の投手三冠、沢村賞にも輝いた田中は、岩隈久志が抜けた今季から名実ともにエースとしてチームの信頼を一身に背負う存在となった。
ところが、ロッテとの開幕戦は6回5失点と乱調。次戦のオリックス戦では、8回まで完封ペースの好投を披露しながらも9回に集中打を浴び同点とされ、チームを勝利に導けなかった。そのような厳しい現実を突きつけられた田中にとって、開幕から2連勝と好調の斎藤との対戦を、意識する余裕などなかった。
「開幕戦を任されて2試合投げたけど、チームに勝ちをもたらすことができなかったので、今日は(3連戦の)カードの頭を絶対に取る、という気持ちで投げました」
悲壮感と闘志が交錯するなかこの日のマウンドに上がった。だが、そのような窮地に追い込まれてこそ本領を発揮するのも田中という投手である。
結果的に田中は、相手打線を8回1失点に抑え斎藤に投げ勝った。
ピンチでも投げ急がず、最後まで冷静だった田中将大。
この試合での大きなポイントとなったのは、「間」だった。
それは、田中が序盤に苦しんだからこそ表現できたものでもあった。
初回、先頭の田中賢介に安打を許すと、2死一、二塁から稲葉篤紀にタイムリーを浴びあっさりと先制点を献上。2回も簡単に2死を奪ったものの連続安打でピンチを招く。結局、無失点で切り抜けられたものの、立ち上がりとしては最悪だった。
試合前までは、いっぱいいっぱいの自分がいた。しかし、ゲームが始まってからの田中は実に冷静だった。
「踏ん張れたのは、投げ急がないことと力みをとることができたからだと思います」
初回の無死一塁で小谷野栄一、2回の2死一塁で田中賢。そして3回の無死一塁で中田翔と、この時点で2対1とチームがリードしていたこともあり、田中は「絶対に点を与えてはいけない」と牽制球を投げることで自分の間を作った。