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もし中田翔が143試合戦っていたら……宿舎に持ち帰った1本のバット、習得した"脱力”スイングとは 

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田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byKyodo News

posted2021/01/29 11:03

もし中田翔が143試合戦っていたら……宿舎に持ち帰った1本のバット、習得した”脱力”スイングとは<Number Web> photograph by Kyodo News

昨季、通算250本塁打を達成するなど、自己最多のシーズン31本塁打を放った中田翔。トレーニングを成果は目に見える形で表れた

 変化はバッターボックスに立つ中田をみれば一目瞭然だった。柔らかく構え、バットを軽く握る。「ボールへアプローチしにいく」という今までとは違うスタイルだ。持っているバットをミートの瞬間に離し、そのままバットもスタンドに放り込むようなイメージでボールを捉えていく。

 中田自身、「今までなかなか出なかったライト方向への本塁打、長打が増えた」と手応えを口にするように、数字にもハッキリと成果が現れた。昨季放った31本の本塁打のうち、センターから右方向への本塁打は7本。ライト方向への打率は.284と全体の打率の.239を大きく上回っている。

「リリーストレーニングを行うようになって、打球方向が変わっている。足を使って、ボールを捉えにいき、最後のミートの瞬間だけ力を加える“脱力打法”によって、90度すべての方向に強い打球を弾けるようになりました。リリース系のトレーニングは全部で11種類ありますが、今はそのうちの5種類を中田選手には取り入れてもらっています。年齢や状況によって、種類を使い分けるというイメージです。

 この1月の自主トレも両足でしっかりと地面を捉え、地面に置いてあるバーベルを全身の出力で一気に胸のあたりまで引き上げるクリーンという種目を中心に、“力をリリースさせる”トレーニングを行ってきました。今では自分の体重の2倍近くの重さで行うことができます。それぐらいの出力を出せるようになっていますね。どこで力を入れるかによって、最大出力は全く変わります」(秀島トレーナー)

中田が求めていた“身体のキレ”

 さらに、打撃フォームだけでなく、意識にも変化があった。

 過密日程による連戦となり、特に猛暑が続く夏場は身体が悲鳴をあげやすい。万全を期すために身体のケアは欠かせないが、しかし、昨季はこれまで施術していた試合前のマッサージをできる限り減らし、その代わりに試合後の身体のケアを入念に行った。試合前は身体を緩めるより適度に刺激を与え、積極的に身体を動かし、体温を上げることで身体のキレを最優先したのだ。

「出力を一瞬で出すという打法」に変えた中田が最も必要だと考えたのはその“身体のキレ”だった。

「昨季は身体のキレがなくなったと感じるたびに、リモートでリリーストレーニングを行ってきました。遠征時は宿舎のトレーニングジムに中田選手が移動し、リモート上でコミュニケーションをとりながらキレを出すトレーニングをする。現在では、たとえ不調に陥った時でも、感覚を戻す“引き出し”が増え、スランプを脱出するための改善策を手にしています。ここが最も大きい進化かもしれませんね」(秀島トレーナー)

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