欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
実は日本人も入れる? “純血主義”を貫く古豪ビルバオ「最大の強み」とスカウティング7つの理念
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph byAthletic Club Bilbao
posted2021/01/15 06:00
インタビューに答えてくれたチーフディレクターのアンドニ・ボンビン氏
スカウティングの際に重視するのは、選手の人間性を含めた全体像がチームにとってどのように機能するかであり、それが個人の評価に繋がる。まずそこをクリアすることで、ポジションごとの適性や補強ポイントに合致しているか、というフェーズに入っていく。
他のクラブと比較すると、この人間性の部分、特にチームへの献身性や戦える選手であるといった内面が占める割合は大きいのかもしれない。技術は教えられても、選手のパーソナリティはなかなか変えられないからね。これらの指針をクラブ哲学として持つことで、連係面やアイデアの共有といった見えにくい力に繋がり、ビッグクラブとも集団として戦うことができる。
理想とするMF像、模範的なレジェンド
そういった視点で観た時に現在のチームで象徴的な選手は、ウナイ・ベンセドールだね。彼のことはアカデミーから見ているが、ボールコントロールに優れて、インテリジェンスを持ち、常に戦える選手だ。まさにクラブが理想とするMF像を体現しているといえる。
あとは残念ながら引退してしまったが、アリツ・アドゥリスの存在はクラブに大きな影響力を持った。あれだけのFWなのにチームのために働く献身性を持ち合わせていた。自分の得点能力という個性を出しながら、チームカラーを100%体現していたといえるね。彼の背中を見て、若手はビルバオというクラブの特殊性を深く理解した。模範的な選手であったし、レジェンドといえる存在だ。
2人以外にもこのクラブで育った選手には、どんなシチュエーションでも諦めるような者はいないよ。そして、他クラブへ移籍しても育まれた競争力を忘れずにトッププレーヤーへと成長していった。このことは私たちの誇りでもあるし、クラブの育成理論の正しさを顕著に表しているといえるだろう。
そして、サポーターの力はクラブにとって非常に大きいね。我々のホームスタジアムである「サン・マメス」は、どんな相手であっても要塞と化す。バルセロナ、レアル・マドリー、バイエルンであれ、我々のホームで勝利することは容易ではない。それは、我々のクラブの歴史やルーツをサポーターが理解し、12人目の選手として相手チームにプレッシャーをかける存在となるからだ。世界中を見渡してもサン・マメスのような雰囲気を持つスタジアムは稀だろう。