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桐蔭学園の成長力が凄かった…大西将太郎が選ぶ花園ベスト15 日本を担えるロック、“松島級”スーパー1年生も
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKyodo News
posted2021/01/11 11:30
決勝戦で激突した青木(左)と本橋など、将来が楽しみなロックが目立った大会だった
決勝戦は連覇を狙う桐蔭学園の「完成度」が際立ちました。
この試合、桐蔭学園は序盤からほとんどキックを使わずコンタクトを多く仕掛けました。これは前半のうちから京都成章を消耗させる狙いがあったと見ています。大会を通して後半から疲れが出やすい傾向があった京都成章に対し、フィジカルに勝る桐蔭学園があれだけぶつかったらいつも以上に消耗する。“ピラニアタックル”と異名がついた複数によるハードなタックルが売りの京都成章でしたが、早く前に出るディフェンスはシャトルランを何本も繰り返している状態です。桐蔭学園には終始、“高校生らしくない”落ち着きがありました(32-15)。
完璧な試合展開を見せた桐蔭学園ですが、県予選では苦労していたように(決勝vs.東海大相模/19-17)、試合をこなしていくうちに仕上がっていった印象を受けます。そういう意味で、おそらく大会期間で一番成長したチームと言えるでしょう。初戦で同じ関東のライバル校である茗渓学園と戦うという抽選結果も大きかった。ハードな日程でしたが、最後の決勝戦で一番良いゲームをする。花園での成長の仕方を知っていたのかもしれませんね。
もっとも成長を感じたのはディフェンスの部分。アタックの引き出しは前評判通りに素晴らしいものでしたが、大会を通じて1人1人のタックルの質が上がり、チームとして成熟していきました。
惜しくも準優勝に終わった京都成章も素晴らしいチームでした。劣勢の中でもSH宮尾(昌典)がラック周辺でタメて、隠れて入ってくるFWをうまく使うなど、ラインブレイクする工夫を多く見せていました。ディフェンスも最後まで粘り、京都成章だったからこそ、あの点数差で終われたのではと思うほどの好チームでした。
「ロックが良かった大会だったよね」
また、決勝戦では、両チームに将来、日本の宝になるだろう青木恵斗(桐蔭学園・3年/187センチ)と本橋拓馬(京都成章・3年/193センチ)というロックが揃っていたことにも触れておきたいです。
ロックは攻守ともに運動量が求められ、セットプレーでもキーマン。個人的にはラグビーにおいてもっとも重要なポジションだと思っています。ただ、背が高く、体重があり、走れて、なおかつ頭もスマートさが求められるので、日本人ではなかなか現れにくい。トップリーグでさえも多くのチームが外国人に託しているのが現状。そういうチームの核となるロックに、身体能力に優れる青木や本橋といった選手が現れたのは日本ラグビーにとっても喜ばしいことですし、「ロックの重要性」を知るチームが増えてきたということとも言える。
さらに彼らは献身的な仕事だけでなく、トライを取る力や1人でラインブレイクする力など、派手なプレーもできる。そこが2人の凄さ。ともに帝京大に進学するようなのでこれからも切磋琢磨してほしい。
他にもロックではいい選手がたくさんいました。まだまだ体つきは細いですが、東福岡の田島貫太郎(3年)の194センチの身長は魅力。フランカーやNo.8での出場が多かったのディアンズ ワーナー(流経大柏・3年/201センチ)もロック向き。東海大相模の川瀬悠河(3年/188センチ)は最後の試合(御所実業戦)でめちゃくちゃ輝いていました。「コロナで大変だったけど、ロックが良かった大会だったよね」と後に言われるかもしれませんね。