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【大学ラグビー】「天理さんは声がデカくて…」高校まで無名の“原石”たちが名門・早稲田を驚かせた『勝因』
posted2021/01/12 18:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
KYODO
イングランド代表のヘッドコーチを務めるエディー・ジョーンズ氏は1月2日の大学選手権準決勝の2試合を見て、決勝をこう予測していた。
「天理が勝つんじゃないかな。9番の藤原と、13番のフィフィタはディファレンス・メーカーね」
ディファレンス・メーカー。違いを生む選手。
そして決勝の結果は、55対28。
「日本一や!」よく喋っていた天理大
エディーさんの予想通りというべきか、天理大が早稲田から決勝史上最多得点を奪って初優勝を飾ったが、とにかくこの日は天理の選手たちの声が記者席にまでよく聞こえた。
ノーサイドの瞬間、まず耳に届いたのは、
「日本一や!」
という誰かの叫び。
入場者が1万1000人だったこと、観戦マナーとして観客が声を出すのを控えていたこと、早稲田ファンが沈黙を強いられたことを差し引いても、天理の選手たちはよく喋っていた。
もともと、関西の大学の試合は関東と比べるとにぎやかである。特にスクラムが組まれると、スタンドにいる部員がなにやら歌い出す。これについて、京都出身のラグビージャーナリスト、村上晃一さんに質問したことがあって、
「ああ、あれは控えの部員が、第一列の選手たち3人の名前を節に合わせて応援してるんですよ」
とにこやかに答えてくれて、疑問が氷解したことがある。
「天理さんの“音量”が大きくて……」
関西のラグビーは、音のカルチャーを紡いできたが、この日の天理もそうだった。
トライを取っても、取られてもトーク・アンド・トーク。
スクラムが組み直しになっても、なにやらにぎやか。
早稲田の3番、スクラムの要である小林賢太は天理とのバトルをこう振り返った。