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【選手権ベスト4】必見“4人”のキーマン 頭脳派10番を封じたい1年生SB、打倒青森山田を誓う2年生守護神
posted2021/01/08 17:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Naoki Morita/AFLO SPORT
コロナ禍で迎えた“異例尽くし”の第99回全国高校サッカー選手権大会もベスト4が出そろった。7日に首都圏の1都3県への発令が決まった「緊急事態宣言」の影響で、準決勝以降の開催が危ぶまれたが、これまで観戦可とされていた保護者と学校関係者も含めた“完全無観客”で、従来通りに埼玉スタジアムにて行われることとなった。
準決勝に駒を進めたのは、山梨学院(山梨)vs.帝京長岡(新潟)、青森山田(青森)vs矢板中央(栃木)。今回はこの4チームのキーマンを1人ずつピックアップしたい。試合順に見ていこう。
山梨学院の新10番像
11年前の選手権王者の山梨学院。今季のチームは長谷川大監督が鍛え上げた「緻密な守備」が魅力だ。必然的にGK熊倉匠や184cmのCB一瀬大寿に注目が集まるが、キーマンは10番を背負うFW野田武瑠だと思っている。
4-4-2の2トップの一角に入る野田は時にトップ下の位置に落ちてボールを受け、的確なボールさばきで攻撃の起点やタメをつくる。さらに左右両足で正確なトラップとパス、スムーズなターンをできることも強みだろう。
「僕の役割は、いかにチームのために時間をつくり出すことができるかだと思っています。セカンドボールや最終ライン、ボランチからのパスをしっかりと集約し、最前線のFW久保(壮輝)がいい状態ならそこに預け、前向きにサポートに行く。久保が収められる状態ではなかったら、キープして周りの選手が上がる時間を生み出す。常に周囲の動きを見て判断しています」
山梨学院の10番というと、これまではいわゆる「ストライカー」タイプが多かった。白崎凌兵(鹿島アントラーズ)、前田大然(横浜F・マリノス)、加藤拓己(早稲田大3年・清水エスパルス内定)、宮崎純真(ヴァンフォーレ甲府)ら、最前線で鋭い裏への抜け出しと打開力でゴールを射抜いていく点取り屋ばかり。
「これまでの10番像とは違うと思います。僕の中の「10番」はドリブルやパスで起点となり、時間をつくり出す選手。自分によって周りが生きるプレーを心がけています」
目指す優勝「自分なりのやり方で」
守勢に回る時間が長かった昌平(埼玉)との準々決勝でも、野田の周りを生かすプレーは際立っていた。
中盤にタレントを揃える相手に対し、谷口航大と石川隼大の2年生ダブルボランチと連動し、3ボランチ気味で横のスライドを徹底。マイボールになるや、すぐに前のスペースに飛び出して、最前線の久保をサポートした。久保が孤立をしないように距離を縮めるだけでなく、昌平の素早いプレッシャーに苦しまないように、味方のパスコースを増やす動きを見せた。この10番の気の利いたプレーは、優勝を狙う昌平を確実に苦しめていた。
準決勝の相手である帝京長岡は、昌平に近いサッカーを志す。準々決勝同様、野田が輝きを見せれるかがカギとなるかもしれない。
「一昨年(18年)のインターハイ(山梨学院が全国優勝)をスタンドで応援していたのですが、10番を背負っていた(宮崎)純真くんはチームを勝利に導く存在だった。タイプは全く違いますが、僕も自分なりのやり方でチームを勝たせられる10番になりたいです」
3度目の全国制覇へ。「山梨学院の新10番」は自分の仕事を全うする構えだ。