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【涙の高校サッカー選手権】1年に正GKを奪われた“J内定3年”の葛藤、「楽しそうにサッカーやるヤツら」への反抗心
posted2021/01/09 06:00
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Kazuaki Nishiyama
<名言1>
こんなに楽しそうにサッカーやるヤツらに負けちゃいけないって。でも、ホントは違うんだよね。
(木島良輔/Number995号 2020年1月17日発売)
◇解説◇
全国高校サッカー選手権では数々の伝説のゲームが生まれてきた。1990年代で“ベスト”と言われるのが1997年度の「雪の決勝」だ。
本山雅志や千代反田充らを擁して“赤い彗星”と称された東福岡が、インターハイと全日本ユースに続く史上初の三冠獲得なるかが注目の的だった。そこにさらなるドラマ性を生んだのは、当時8度の全国制覇を誇る名門・帝京、そして都内に降り積もる大雪だった。
当時、帝京も貞富信宏、そして中田浩二とJ内定者が複数人いた。その中で10番を背負った木島にはオファーがなく“就活中”。進路未定のまま決戦に臨んだ。
雪の降り積もるピッチという不確定要素によって、東福岡の技術が減じられるのでは――戦前、そんな予想があった。実際、先制点を奪ったのは“蹴って走る”スタイルでいった帝京だったが、木島は試合前からこう思っていたという。
「正直、俺はイヤでした。あの雪は、ドリブルを持ち味とする俺のプレースタイルはハマらない」
「サッカーは、楽しんだヤツのほうが強い」
ただ、画面を通して見ると真っ白に見えたピッチだが、実は雪の積もり具合はさほどではなかったという。それを肌で感じ取った東福岡イレブンは“普段通り”ボールをつなぐと、本山の絶妙なアシストなどもあり、2-1と逆転に成功し、歓喜のタイムアップを迎えたのだ。
「サッカーは、楽しんだヤツのほうが強い。あの時はまだ、そういうことがわかってなかった」
もし木島が、雪のピッチを楽しめていたならば――。東福岡の三冠制覇の結末は、少し違ったものになっていたのかもしれない。