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【選手権ベスト4】必見“4人”のキーマン 頭脳派10番を封じたい1年生SB、打倒青森山田を誓う2年生守護神
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2021/01/08 17:00
優勝候補・青森山田高校で好調ぶりが際立つ安斎颯馬(3年)
昨年は“クローザー”だった安斎颯馬
続いて第2試合に登場するのが優勝候補筆頭の青森山田だ。前回大会は準優勝、過去5大会では優勝2回、準優勝1回、ベスト4が1回と驚異的な結果を出している。
すでに浦和レッズ加入の内定を発表している主将CB藤原優大や今大会の顔とも言える2年生エース・松木玖生ら、今年もタレントが豊富だが、ここまでの戦いの中で際立った躍動を見せるのがMF安斎颯馬(3年)だ。
安斎も昨年の準優勝メンバーの1人だ。豊富な運動量と高いボール奪取力とカバーリング能力を評価され、僅差でリードする展開で投入をされるなど、黒田剛監督から“クローザー”として重宝された。守備におけるスペースの感知能力や精度の高い予測から素早いステップと身のこなし、ボールを奪い取る技術は目を見張るものがあった。それゆえに今季はアンカーで勝負するのではないかと思っていた。
だが、蓋を開けてみると彼のポジションはシャドー。松木とのコンビで攻撃の要衝となっていた。
威力増す青森山田の2シャドー
セカンドチームとの対戦で話題を集めた「スーパープリンスリーグ東北決勝」で見せた動きは秀逸だった。1.5列目からゴール前のスペースに果敢に顔を出したのは、松木ではなく安斎。守備で発揮していたスペースの感知能力を攻撃面で生かし、DFの心理を逆手に取った駆け引きでセカンドストライカーとしての能力を解き放っているように映った。スーパープリンスリーグ東北決勝での1ゴールを含め、5試合13ゴール。圧倒的な数字を叩き出し、リーグ得点王に輝いた。
今大会でもその能力をフルに活用されている。そして1トップの名須川真光(2年)の成長により、安斎と松木の2シャドーの威力は増した。
初戦となった2回戦広島皆実戦、1-0で迎えた50分。安斎は右サイドで縦パスを受けると、対峙したDFを鋭い切り返しでかわし、カバーに来たDFも左足の切り返しからバランスを崩しながらも球際を制した。そして角度のない位置から迷わず右足を振り抜き、ゴール左隅上段に突き刺した。
3回戦の帝京大可児戦のPK獲得のシーンも、名須川がボールを持った時に、DFの視界から消える動きでスルーパスを引き出した。GKが鋭い出足で前に飛び出してくる難しいシチュエーションだったが、安斎は加速を止めることなく、一番早く足がボールに到達するように右足を伸ばしてアウトサイドでボールを触った。帝京大可児が1点差に追い上げてきた時間帯だっただけに、流れを断ち切るスーパープレーだった。
自分の持っている能力をポジションやチームとしての要求に応じて発揮する。クローザーではなく、チームにはなくてはならない存在に成長した背番号7に注目してほしい。