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井原監督「誰だ、情報入れたの!」の教訓と昇格 諦めの悪い男・三浦文丈監督(相模原)に聞く“J2&J3の魔境性”
posted2020/12/30 11:01
text by
林口翼Tsubasa Hayashiguchi
photograph by
Getty Images
――J2昇格おめでとうございます。あらためて昇格を決めた心境から教えてください。
三浦:やっぱり嬉しいね。あとは反響が本当にすごくて。「そんなに知り合い、いたかな」と思うくらい連絡が来る(笑)。全部返信するのに3日間くらい掛かったかな。すごく有難いね。
――第33節を終えて2位・長野と勝点1差の3位でした。最終節で勝利したとしても、昇格できるかは長野の結果次第という状況でした。当時、チームはどのような雰囲気だったでしょうか。
三浦:他力になってしまったぶん、逆に自分たちは勝つしかないと吹っ切れていた。長野の立場からすると、自分たちが勝ったら決まりだけど「相模原が負けたら、引き分けたら……」という余分な計算も入る。でも、俺らはもうやるだけだと。とにかく今治に勝って、長野の結果を待とうと吹っ切れていた。選手に対しても「勝つことだけに100%集中しよう」と話をしただけで、長野と比べるとプレッシャーもあまり掛からなかったと思う。
2015年、アビスパ時代の苦い思い出
――最終節は長野の情報は一切入れなかったそうですね。
三浦:そうだね。それは事前に決めていた。2015年に福岡で井原さん(井原正巳・現柏レイソルヘッドコーチ)の下で、自分もヘッドコーチを務めていたときに、磐田と昇格を争っていた。最終節が岐阜戦で、その試合は4-1で勝っていたんだけど、磐田vs大分が拮抗していて、磐田が終了間際に同点に追いつかれたという情報が入ってしまった。(福岡の)控えの選手やメンバー外の選手がその結果を見てすごく喜んでしまったんだよね。
結局、その後に磐田が勝ち越して自分たちはプレーオフに回ることになったんだけど、そのときに井原さんも「誰だ(情報を)入れたの!」と憤慨していた記憶がある。もちろん今回も、みんな長野の情報は知りたいけれども、自分たち以外に矢印を向けてしまったという苦い経験を踏まえて、絶対に良い影響は与えない。まずは勝つことが大前提だと全体で共有していた。
――昇格決定を知った瞬間を振り返ると?
三浦:まずは今治に勝ったことに安堵して、そのあとにすぐ「長野はどうなった!」と聞いて(笑)。そこで昇格が決まったことを知った瞬間、やっぱり嬉しかったね。自分や選手、クラブがずっと信じてきたものが現実になったわけだし、劇的な形だった。そういうものが重なって「こんなに嬉しいことはないな」と。あの瞬間はもう本当に頭が真っ白で、冷静になってから段々と嬉しさがこみ上げてきたね。選手としてはリーグやカップ戦で優勝したこともあるけど、そのときとはまた違った嬉しさがあった。もう格別だったね。