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井原監督「誰だ、情報入れたの!」の教訓と昇格 諦めの悪い男・三浦文丈監督(相模原)に聞く“J2&J3の魔境性”
text by
林口翼Tsubasa Hayashiguchi
photograph byGetty Images
posted2020/12/30 11:01
J2昇格したSC相模原の望月会長(左)と三浦監督。J3を勝ち上がるのすら難しいのが、今のJリーグだ
――今季のJ3についても少し振り返ってみましょう。終盤戦に入っても約半数のクラブにJ2昇格の可能性が残っていました。
三浦:自分が長野で指揮を執っていた2016年のときは正直、「ここには勝たないといけない」というクラブがいくつかあったけど、いまはそういうクラブはない。終盤でも大混戦になったのも順位が上のクラブが下に対して勝ち切れないのが続いたわけだから、間違いなくクラブ間の実力差が拮抗してきている。どことやっても簡単な試合はないし。昨季以上に今季はそれをさらに感じたかな。
J2昇格の2クラブは支配率ワーストだった
――今季のJ3で興味深いことは、ボール支配率のリーグワースト2クラブがいずれも昇格を果たしました。
三浦:昇格するためにポゼッション率は関係なくて、「失点が少ないこと」「負けが少ないこと」「セットプレーから点が取れること」が大事だと思っていた。過去を見てもそういうチームが昇格しているから、特に今季は3つの部分に特化しようと。昨季はポゼッションを掲げてスタートしたが、今季は「ボールを保持しよう」ということは練習でも一切言わなかった。
一番の目標というのは昇格すること。そこの根本の部分は変わらないけど、そこに向かうためのアプローチや手段は多少変えた部分もあった。秋田もあれだけ走ったけど、結果的にポゼッション率は一番低くて、ウチも2番目に低いと。ただ、その代わりにしっかりとボールがゴールに向かっている。それが一番大切なことだと思う。
――そういう意味で、今季は「こういうクラブが昇格する」という次元に持っていくことができたのでは?
三浦:そうだね。今季は自分から多くコミュニケーションを取らなくても、要所を抑えたり、背中を押すだけで、選手が自発的に動いていく雰囲気があった。何か問題が起きたときは、こちらからアプローチする必要もあったけど、選手がピッチの中で解決できるのであれば、自分は言わなくてもいいということが多々あった。
自分が現役時代に優勝したときもそうだけど、何かを成し遂げるときは黙っていても選手が動いていく流れができる。今季もそういう雰囲気で戦えていただけに、「このチームなら行ける」とずっと思っていた。だから「諦めの悪い男」という言葉も出たんだと思うし、みんなが最後に何かがあるんじゃないかと感じていたと思う。