猛牛のささやきBACK NUMBER
難病と闘うオリックス西浦颯大、医師に「復帰は8割強無理」と言われても淡々と前を向ける理由
posted2020/12/28 17:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
11月26日、オリックスから、高卒3年目21歳の外野手・西浦颯大と支配下契約を結ばないこと、そして左大腿骨の疲労骨折で戦列を離れていた西浦が、検査の結果、「両側特発性大腿骨頭壊死症」と診断されたことが発表された。
「特発性大腿骨頭壊死症」は、股関節を形成する大腿骨の先端部分が血流低下などにより壊死し、股関節に痛みが生じる病で、国が指定する難病だ。
球団から病名が公表されたその日、西浦は自身のSNSに、病と闘う決意をつづった文章を投稿し、「絶対に戻ってきます」という言葉で締めくくった。それでも、実際のところ今どのような病状で、どのような心境なのか、気がかりだった。
オリックスは西浦と育成選手契約を結ぶと見られており、球団から知らされた契約更改の予定表にも西浦の名前があった。契約更改後には、他の選手と同じように記者会見が行われることになっていた。
そして12月8日、育成選手として契約を終えた西浦は、グレーのしゃれたスーツに身を包み、いつもと変わらない飄々とした雰囲気で記者会見場に現れた。松葉杖を使うこともなく、歩く姿は自然で、とても大きな病気を抱えているようには見えなかった。
痛みは落ち着き、日常生活には支障がない状態だという。少しホッとしたのだが、その後、西浦の口から淡々と語られた現実は重いものだった。
一軍昇格後に走った激痛
最初に違和感を感じたのは、11月3日に一軍に再昇格する直前だったという。昇格後に激痛が走り、試合中も痛くて力が入らない状態だった。病院に行き、左大腿骨の疲労骨折と診断されたが、その後、詳しい検査を行ったところ、「両側特発性大腿骨頭壊死症」と診断された。
「最初は『なんだその病気?』って感じだったんですけど、2回3回、詳しく説明してもらって、『あ、こういうことなのか』ってだんだんその病気のことを知ったという感じですね。『あ、僕、病気なんだー』って感じでした」
医師からは厳しい宣告を受けた。
「(プロ野球選手として)復活できる可能性は低い、8割強は無理、と言われたので、『そんなにひどいのか』と思って」
両足の手術が必要で、西浦の場合は骨盤の骨を大腿骨頭に移植する。同じ病気の手術をしたアスリートの前例はないという。それでも、だからこそ前を向こうと思った。
「この病気から(アスリートとして)復活した人がいないなら、僕が、一番最初に復活してやろうというふうに思いましたね」
記者会見ではサラリとそう言ってのけたが、その心境にたどり着くまでにどれほど苦しんだか、想像に難くない。