令和の野球探訪BACK NUMBER
ヤンチャな坂本勇人を育てた金沢成奉が語る「自律」と「自立」 鑑別所送りの少年を主将に抜擢したことも
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byNanae Suzuki
posted2020/12/25 11:04
今季2000本安打を達成し、球界に名を残すバッターへと成長した坂本勇人。高校時代はヤンチャだったと金沢監督は振り返る
「先頭を走れるように」
ここまで金沢監督の言葉でお伝えしてきたが、この夏の明秀日立は確実に「変化」し、そして「進化」してきた。
金沢監督が伝えようとするのは、すでに選手たち同士で話し合し、監督の顔色を窺うことよりも、行動が先に目立つようになった、ということ。「見る」と「察して行動する」は大きな違いである。それはミーティングの時間を増やしたことも影響しているが、何より監督自身が「変化」を恐れなかったことに尽きる。「ちょっとした自立心が成長を早めているのではないかと思います」と金沢監督自身も手応えを感じていた。
また同時に、高校野球もこの夏をきっかけに大きな転換を図るべきとも金沢監督は考える。特にベンチ入り選手を大会中も入れ替えることができるようになれば、さまざまな選手にチャンスを与えることができる。
「(移動費など経費の手当がある)甲子園大会となると厳しいかもしれませんが、自費である地方大会は認めても良いと思います。来年以降もそのように実施するとしたら、最後までやり切る選手たちが増えます」と、どこかで県高野連に提案することも視野に入れているという。
ただ、いざ試合が始まれば「勝負への執着心を忘れてしまってはいけません」と話すように、これからも全力で勝利を掴み取ろうという姿勢は変わることはない。
「今日ここまで話したことは理想に近い部分があるので、大変だと思いますが、その先頭を走れるようにやっていきたいです」
この「先頭」という言葉に未だ衰えぬ勝負師としての姿を見た。変わり続ける時代に対応し、名将はさらなる進化と高校野球の発展を目指し、歩みを止めることはない。
【前編はこちら】坂本勇人の恩師・金沢成奉が「甲子園に取り憑かれていた」から「補欠を作らない」に変わったワケ
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