第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
初めてシード校として臨む東京国際大学の勢い。前回メンバーが8人残る明治大学の安定感。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byAsami Enomoto
posted2020/12/23 11:00
全日本大学駅伝の2区で好走した東国大・丹所(左)と、明大のエース・小袖。箱根駅伝でも主要区間への配置が予想される。
山本監督のうれしい悲鳴
「選抜合宿に連れていくメンバーも、これまでは“この選手を連れていってもなあ……”と誰を連れていくかで悩んでいましたが、今季は“誰を外せばいいか”を考えるのが難しかったですね。チーム力が上がった証拠ですが……」
と、山本はうれしい悲鳴を上げる。16人のエントリーメンバーを選ぶのも相当頭を悩ませたことだろう。これまで“優勝”と口にするのを控えていた山本も、その二文字を口にするようになった。事実上、目標の上方修正だ。
前回の箱根駅伝は6位だったが、大手町のフィニッシュ直前まで熾烈な3位争いを繰り広げた。そのメンバーが8人残っており、今回も前回のオーダーをベースに組むことになりそうだが……。
「往路は特に、前回と同じオーダーでもいいかなとも考えているのですが、1年経って、選手も力を付けたし、新しい戦力も出てきているので、多少の入れ替えはあるんじゃないかと思います。
今は攻めて、攻めて、攻め続けたチームが勝つ。往路優勝をきちっと狙っていって、トータルでどこまで勝負できるかがポイントになる。勝負できる選手を、往路につぎ込んでいきたい」
山本は、序盤から攻めのレースにすることを心に決めている。軸になるのは、先に挙げた6人のエース候補たちだ。
「鈴木、加藤、櫛田の3人は、上り(5区)もやれるし、2区のような難しいコースもやれる。小袖、手嶋、児玉の3人は、1区、3区、7区あたりに配置することになりそう。そうすれば、十分に阿部の穴は埋められると思っています」
区間構想はだいぶ固まってきているようだ。
「直前に調子が良い選手を起用したい」
ただ、大胆な起用があるのも、山本の采配の特徴だ。前回は1年生の加藤をエース区間の2区に抜擢。夏にケガがあり、箱根駅伝予選会も不出場だっただけに、サプライズにも映ったが、1時間07分52秒で区間10位とその起用は見事にはまった。
「その時の勢いって大事だと思うので、直前に調子が良い選手を、学年に関係なく積極的に起用したいと思っています。走るべき選手が、きちんと調子を整えていけるかが鍵になると思いますが、的確に見極めていきたい」
選手層が厚くなり、チーム内のメンバー争いも激化しているだけに、現時点での区間構想が大幅に変更されることもあるかもしれない。
明大の最大のアドバンテージは山の経験だ。前回5区5位の鈴木、6区7位の前田舜平(4年)と、前回好走した選手が上り、下りともに残っているのは大きい。
「他校の監督さんが『明治大学を警戒している』と言っているのをちらっと耳にすることがあるんですけど、それは“山がいる”からだと思います。でも、彼ら頼りになってもダメだと思う。第2候補もきちっと準備をしていますよ。特に鈴木はどこでも走れるタイプで、2区に起用する可能性もありますから」
リザーブにも、力のある選手を準備しており、山対策に抜かりはない。序盤から勢いに乗り、さらに山で主導権を握ることができれば頂点も見えてきそうだ。総合優勝すれば実に72年ぶり。紫紺が輝く時は近い。