第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

総合優勝した10年前とどこか似ている早稲田大学。駒澤大学は田澤の力を引き出したい。 

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箱根駅伝2021取材チーム

箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

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photograph byNanae Suzuki/Asami Enomoto

posted2020/12/22 11:00

総合優勝した10年前とどこか似ている早稲田大学。駒澤大学は田澤の力を引き出したい。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/Asami Enomoto

早大・中谷は前回1区を走って区間6位(左)。駒大・田澤は全日本大学駅伝優勝の立役者となった。

駒澤大学

第96回箱根駅伝(前回大会):総合8位
55年連続、55回目

Head Coach of the TEAM:大八木弘明

名将とエースがタッグを組み、7度目の総合優勝へ。

文=生島淳

 駒澤大学が、優勝を狙える位置にまで帰ってきた。

「平成の常勝軍団」と呼ばれた駒大も、箱根駅伝で優勝したのは2008年(第84回大会)が最後。それ以降も東京オリンピックのマラソン代表に内定している中村匠吾、2015年の世界選手権・北京大会の代表だった村山謙太ら、学生長距離界を代表するランナーはいた。しかし、それでも優勝には手が届かなかった。彼らが卒業してからのことを、大八木弘明監督はこう振り返る。

「正直、厳しい状態が続きましたね。それまでは(中村)匠吾のようなエースが中心になってチーム作りが進んでいましたし、彼らがいればレースでも主導権を握ることができた。ところが、エースが育ってこないと、どうしても駅伝では後手に回ってしまう。2018年の箱根駅伝(第94回大会)では12位となって、予選会に回りましたしね。なんとかしてもう一度優勝しようと、練習内容や部のルールを見直しながらやってきたんですが、なかなか戦力が整わなかった」

 流れが変わったのは、2019年に田澤廉が入学してからである。田澤はトラックのスピードもさることながら、駅伝での強さも持ちあわせていた。前回の箱根駅伝では3区を走り、区間3位(区間新記録)の成績で7人抜きを達成。1年生の箱根駅伝デビュー戦としては上々の滑り出しで、久しぶりに「駒澤のエース」誕生の予感がした。

全日本駅伝、アンカー田澤のスパート

 そして今季に入り、全日本大学駅伝で駒大は6年ぶりの優勝を手にする。優勝を手繰り寄せたのは、アンカー田澤の爆発的な走りだった。

 田澤はトップの青山学院大学とは41秒差、2位の東海大学からは2秒差でたすきを受けると、東海大の名取燎太の後ろにぴったりとつく。田澤はこの区間の序盤をこう振り返る。

「本当は56分台を狙っていたんですが、優勝がかかっていたので前半は自重して、名取さんに合わせていく感じになりました」

 余裕を持っての追走である。10km手前で先頭の青学大を捉えてから引き離すと、東海大とのマッチレースになった。どちらが仕掛けるのか。すると、残り1km手前で田澤が動いた。田澤はスパートをかけるタイミングをうかがっていたという。

「名取さんの様子を見ながらでしたが、2段階のスパートは用意していました。運よく、最初のスパートで離すことができたので、よかったです」

 フィニッシュ地点で待っていた大八木監督も満面の笑み。ようやく、強い駒大が戻ってきた瞬間だった。

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