第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

総合優勝した10年前とどこか似ている早稲田大学。駒澤大学は田澤の力を引き出したい。 

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箱根駅伝2021取材チーム

箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

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photograph byNanae Suzuki/Asami Enomoto

posted2020/12/22 11:00

総合優勝した10年前とどこか似ている早稲田大学。駒澤大学は田澤の力を引き出したい。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki/Asami Enomoto

早大・中谷は前回1区を走って区間6位(左)。駒大・田澤は全日本大学駅伝優勝の立役者となった。

監督・コーチが現役時代に5区を走った経験

 上位進出へは、5区と6区をどのように攻略するかにかかってきそうだ。相楽監督は現役時代に5区と6区を走っており、コーチの駒野亮太は5区で区間賞を獲得した実績がある。相楽監督が早大にスタッフとして戻ってきてから箱根駅伝での成績が安定し始めたのは、そのノウハウを生かし、以前は苦手としていた山で一定の成果を挙げられるようになったからでもあった。もっとも、この2大会はその山で苦戦したのだが……。

「候補は複数名いる」と相楽監督は話すが、前回5区で区間15位だった吉田匠(4年)、6区で区間19位だった半澤黎斗(3年)の連続起用もありそう。ともに雪辱を期して今季を送っており、同じ轍を踏むことはないだろう。

 今回の早大の柱となるのは3年生だ。特に、中谷雄飛と太田直希は、10月のトラックゲームズ in TOKOROZAWA、12月の日本選手権と、立て続けに10000mでそろって自己記録を大きく更新。ともに27分台に突入し、学生トップランナーとしての存在感が出てきた。全日本大学駅伝は、このふたりの活躍が大きく、前半で大きな貯金を作ることに成功した。箱根駅伝でも往路の主要区間を担うことになりそうだ。

 このふたりとともに「3年生三本柱」を形成するのが、千明龍之佑。夏に左脚脛骨を疲労骨折し、全日本大学駅伝への出場は回避したが、箱根駅伝には間に合う見込み。どれだけ力を戻しているかで、任される区間は変わってきそうだが、次期駅伝主将でもある千明が戦線に復帰したのは、早大にとって大きなプラスアルファになる。

強い早稲田の方程式

 また、早大が駅伝で結果を残す時には、一般入試や指定校推薦で入った“一般組”、早稲田実業高や早大高等学院から進学した“付属組”の活躍が絶対に欠かせないが、今季は指定校推薦で文学部に入った山口賢助(3年)が主力に成長。早稲田実業高出身の室伏祐吾(3年)も力を付けてきた。強い“早稲田”の方程式が仕上がってきた。

 ルーキーも充実している。大学に入ってから急成長中の辻文哉は、1年生とは思えないほど安定感が際立っている。他校の1年生の活躍の陰に隠れてしまってはいるが、菖蒲敦司、諸冨湧、北村光らも高いパフォーマンスを発揮している。2年生の井川龍人と鈴木創士も、前回に続き、箱根駅伝では大きな戦力だ。

 全日本大学駅伝は3年生以下で臨んだが、距離が延びる箱根駅伝では必ず4年生にも出番があるだろう。教育実習があって全日本大学駅伝を走れなかった宍倉健浩は、一気に調子を上げてきている。そして、駅伝主将の吉田は、今回の箱根駅伝を集大成と位置づけ、故障がありながらも準備を積んできた。

 そういえば、10年前の三冠を成し遂げた年も、3年生以下が強力で、出雲駅伝、全日本大学駅伝を走った4年生はひとりだけだった。それが、箱根駅伝には4人の4年生が出場し、総合優勝の大きな力となった。今季の早大のチーム構成は、当時とどこか似ている。目標の3位以内に向けて、4年生の“地力”が最後のピースになる。

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