情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
「うんちをもらえないだろうか?」元浦和レッズ鈴木啓太がラグビー松島幸太朗に頼んだワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/12/13 17:00
2000年から2015年まで浦和レッズ一筋でプレーした鈴木啓太。今ではすっかりデスクワークも身に付いた
松島幸太朗に「うんちをもらえないだろうか?」
これはビジネスありきの話ではない。
アスリートのため、社会のため。自分が情熱を傾けることができるベンチャーを、「引退前」に立ち上げることに意味があった。サッカーへの情熱を、そのまま腸内環境解析の事業につなげようとした。
ビジネスありきなら、4年も掛けて腸内細菌を納得するまで深掘りすることなく、もっと簡単に商品化できるものから始めることも可能だった。しかし鈴木はそれをしなかった。まずはアスリートの腸内環境は一般の人と異なるかという自分たちの仮説が正しいのか、とことん研究してみることにした。
「うんちをもらえないだろうか?」
アスリートの検体を集めるにあたって真っ先にお願いしたのが、親交のあるラグビー日本代表の松島幸太朗であったという。最初はギョッとされたそうだが、自分がやりたいことを説明すると快く受け入れてくれた。
サッカー、ラグビー、野球など約30の競技にまで広げた
アスリートなら自分の思いを分かってくれる。そう確信を持つことでき、自分の人脈を使って様々な競技のアスリートに接触を図って検体をかき集めていく。サッカー、ラグビー、野球など約30の競技にまで広げた。
「でも僕1人で集めたわけじゃないんです。一緒に研究してくれる人や僕の思いに賛同してくれた方々が動いてくれたところもあります。最初は大体決まって『便を集めてどうするの?』って言われましたよ。何かを売りたいから手伝ってほしいっていうことじゃない。
だからそのたびに、アスリートがより活躍できるため、健康的な社会をつくるため、次世代のアスリートを育てるために協力してもらえないかと、伝えてきました。そこは凄く賛同していただけたのかなって思います」
賛同を得ることによって己のモチベーションも上がった。協力してくれた人の気持ちに意地でも応えたいと思った。