情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
「腸内細菌事業」経営者・鈴木啓太 “生き方が真逆”のカズとヒデに憧れ、学んだこととは
posted2020/12/13 17:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
鈴木啓太は、予測に長けたプレーヤーだった。
守備では相手がどう動いてくるか、攻撃では味方がどう動こうとしているか。人より飛び抜けてテクニックがあるわけでも、フィジカルが滅法強いわけでもない。頭を動かして、先を読んで、体を張って信頼を得てきた。日本代表では“考えて走る”を標榜するイビチャ・オシムから評価されたのも頷ける。
だが外からは予測がよく当たっていたように見えても、本人からすればそのような感覚はない。
「たとえば守備の話をすると、10個先を読んで当たるのは大体1個か2個くらい。つまり8個は当たっていない。全部予測が当たっていたら僕のポジショニングにミスは起こらないし、失点しないわけですよ。それでも予測や仮説を立てます。しかしそれはその時点で考えていることの幅にしか過ぎません。その幅を超える予想できないことが起こるから対処しようとして人は成長する。少なくとも僕はそう思っています」
想定外のことが起きても心を乱さない
予測よりも大切なのはむしろ対処。
当たろうが当たるまいが、その後の対処こそに重きを置いていた。対処に長けたプレーヤーという表現こそが正鵠を得ているのかもしれない。
想定外のことが起ころうとも決して心を乱さず、対応に集中する。これはプレーばかりではなく、彼は「自分の人生そのもの」と言い切る。
「サッカー人生でも予測というか計画するわけです。僕は高3のときにスカウトされましたけど“プロ2年目で試合に出るようになって、次はこれくらいお金をもらえるプレーヤーになって”とか考えるわけです。
でも実際プロになってみたら、『お前はクビだ』と言われたことがあったり、アテネ五輪の最終予選まで五輪代表のキャプテンをやっていても本大会に行けなかったり……挙げるとキリがないくらいいろんなことがありました。計画の幅を超えていくのはなかば当たり前で、結局はそこからどうするか。
もちろん順調に進んでいく人もいますけど、僕の場合はそうじゃなかった。計画どおりに進むこともあるけど、むしろそのとおりに進まないことのほうが多い。『じゃあどうする?』って問い続けてきたのが自分の人生だし、自分のプレー。そしてこれはAuBでもそうなんです。予測できないことが起きても、何とかしようとすることで自分も会社も成長できますから」