情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
「うんちをもらえないだろうか?」元浦和レッズ鈴木啓太がラグビー松島幸太朗に頼んだワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/12/13 17:00
2000年から2015年まで浦和レッズ一筋でプレーした鈴木啓太。今ではすっかりデスクワークも身に付いた
鈴木の仮説を後押しする形となった
そして研究の成果としてアスリートの腸内には一般の人の約2倍となる酪酸菌があることを突き止めた。酪酸菌は腸内の悪玉菌を抑制して善玉菌を増やす効果があるという。すなわち人が健康でいるには必要不可欠な菌であり、鈴木の「コンディションに気を配っているアスリートは腸内環境もいい」という仮説を後押しする形となった。新しい発見が続いたことで、ようやくサプリメントの商品化も見えてきたのだった。
しかし一方で研究に突っ走ってきたことで経営はギリギリだった。運転資金を回していくにはもはや限界に近かった。2019年春のことだ。
「もう本当に大変だったんですよ」
鈴木は端正な顔を崩して苦笑いを浮かべた。
「結局、自分を信じ続けたヤツがプロになっている」
「事業としてやっているのにキャッシュインがないので厳しい。人に掛かるお金もそうですけど、やっとプロダクトが出せそうになるとさらにお金が必要になってきますから。資金調達は進めているけど、これもなかなか集まりにくい。
想像していたものよりはるかに大変だなとは思いました。ただ、これってサッカーをやっていたころと一緒なんですよ。子供のときに『プロのサッカー選手になります』って言っても、周りは『そんな簡単にはなれないよ』って言うじゃないですか。でも自分だけは絶対になるって信じている。もちろん、ときどき疑うこともありますよ、やっぱ無理かもしれないなって。でも僕は信じることをやめなかった。僕だけじゃない。結局、自分を信じ続けたヤツがプロになっているんですよ」
ときどき疑うことはある。
でも自分を信じる、信じ切る。
出資者にありったけの情熱を伝え、賛同を得たことによって資金を集めて何とかこの最大の危機を乗り切ることができた。
サッカーから学んだ人生訓が、彼を救ったのだった。
(後編に続く。下の「関連記事」からもご覧になれます)
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