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遠藤航がブンデス“1対1最多勝男”に 元ドイツ代表DFが語る「ツバイカンプフ」名人への極意
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/12/11 11:01
第10節では大迫勇也とマッチアップする場面があった遠藤航。その1対1能力は、ドイツでもトップレベルになりつつある
「フィジカル的な頑丈さはもちろん必要だ。必ずしも体が大きくなければならないわけではないけど、軸が安定していることが大事。そして状況をしっかりと読み取る能力が欠かせない。そうすることで相手と体をぶつけ合うことなくボールを奪うこともできるわけだ」
クラマーから学んだ「残心」の心構え
そんなシンキビッツの説明を聞いているときに、ふとあることを思いだした。デットマール・クラマーに教えてもらった言葉だ。
メキシコ五輪で日本を銅メダルに導き、日本サッカーの父と称えられ、バイエルン監督としてチャンピオンズリーグの前身であるヨーロッパチャンピオンズカップ2連覇を達成したドイツの名指導者は競り合いにおける心構えをこう説明していた。
「京都の剣道の先生に“残心”という言葉を教えてもらった。一の太刀で全てを決めようとすると、もしかわされたとき相手の返しを無防備で受けることになる。相手の攻撃に対応することが出来ないということだ。サッカーでもそれは同じことなんだ。一か八かのタックルはかわされたら何の役にもたたない。自分のタックルを相手がかわしたことも想定して動き出さなければならない」
相手がどんなタイプか頭に入れているか?
すっと体を寄せながら相手を少しずつ追い込み、“ここ!”という瞬間を逃さずにアタックする。ではどのようにそのタイミングを計るべきなのだろうか。シンキビッツは相手との駆け引きで優位に立つことの大切さを語っていた。
「誰と対峙しているのかを考えずにプレーしている選手が多い。相手は完全な左利きなのか、どちらの足でもうまくボールを扱うことができるのか、スピードがあるのか。そして自分はどうなのか。そうした情報からどこへ相手をおびき寄せるのかを見つけ出すことが選手には求められる。個人戦術的に考えたら“まずは中を切ってアウトサイドへ”というのは一つの定説だが、いつでも当てはまるわけではない。
例えばかつてのルーカス・ポドルスキのようにスピードがあり、強力で正確な左足を持つ選手が相手だった場合、左サイドで外へ運ばれたらそこから正確で危険なクロスボールを上げるチャンスを与えることになる。それならば外を切って、中におびき寄せるように守ることが必要になるわけだ」