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【引退】五郎丸歩の2015年W杯「僕にとって最高の瞬間」は…衝撃の南アフリカ戦勝利ではなく “あの試合”
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byKazumi Kurigami
posted2020/12/09 17:02
南アフリカ戦の歴史的勝利から2カ月半。主将・副主将の3人が一堂に会した。
「日本人もコンタクトスポーツで世界に勝てる」
ワールドカップ前、五郎丸はこう言っていた。
「今回のワールドカップは、ラグビーだけでなく、日本のスポーツ界全部を変えるチャンスだと思います。これまで日本が世界で結果を出してきたスポーツは、サッカーや野球や水泳など直接のコンタクトが少ないとか、レスリングや柔道のような階級のある競技が多いですよね。だけどラグビーでベスト8に入れば、スポーツ界に与えるインパクトはすごく大きい。日本人も、しっかりトレーニングして臨めば、コンタクトスポーツでも世界に勝てることが証明できると思いますから」(Number PLUS「桜の決闘」より)
上の発言のポイントは、ラグビーと他競技の比較にあるのではなく、「しっかりトレーニングして臨めば」の部分だ。エディー・ジャパンはよく知られた“世界一きつい練習”をベースに、フィジカルレベルで相手より対等以上に立つことをあらゆる大前提としてきた。つまり「フィジカルは言い訳にならない」という良き前例を、今回のラグビー日本代表はスポーツ界に残したと言える。このことは今以上に強調されてしかるべきだろう。
五郎丸にとっての「最高の瞬間」。
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その五郎丸にとって、W杯での「最高の瞬間」はいつだったのか。それは意外なことに、あの南アフリカ戦でも、最後のアメリカ戦でもなかった。
「僕は3戦目のサモア戦ですかね。南アに勝って注目を浴びて、次のスコットランドに負けて、これから日本のラグビーがどうなるかみたいなところで、あの試合は初めて日本のラグビー界が国民のみなさんから期待されて臨む試合だった。そこで結果を出せたというのは、僕の中ではすっごく大きかったです」(Number891号「ナンバーMVP座談会」より)
対戦国の中でもフィジカルのパワーにおいては随一。そのサモアを相手に実力で完勝できたからこそ、本当の意味でスポーツ界にインパクトを残すことができた。五郎丸にとって「有言実行」を懸けた試合でもあったのだ。