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ミスしても不思議な魅力…村元哉中・高橋大輔組がデビュー 常識を変えるような“化学反応”が?
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byYukihito Taguchi
posted2020/12/03 17:03
リズムダンスは64.15点で2位、フリーダンスで93.10点の3位となり、合計157.25点で3組3位でデビュー戦となるNHK杯を終えた
村元が何度も「落ち着いて楽しもう」と声をかけた
公式練習に現れた高橋は、氷に降りるとすぐに村元をエスコートするように手を繋ぐ。お互いの目を見つめ合って、アイコンタクトを取りながら次の動作を確認する。練習のあいだずっと、優雅な姿勢で過ごしエレメンツを練習するたびにリンクサイドに向かって社交ダンスのように挨拶をする。
「練習の仕方や雰囲気作りがシングルと違うので戸惑うところがあって、公式練習初日や、リズムダンス朝の練習では緊張感が高まってしまいました」
公式練習で固くなったのか、壁ギリギリまで滑ってぶつかりそうになる高橋を、“お姉さん”の村元が何度も「落ち着いて楽しもう」と声をかけて支えた。
「弾けるシャンパンのように」
迎えた27日のリズムダンス本番。映画『The Mask』のアップテンポな曲で、高橋は黄色いズボンにサスペンダーという、映画のジム・キャリーをイメージした衣装で現れた。
冒頭のステップシークエンスは、2人が組まずに滑ることが出来るため、高橋の持ち前のエッジワークがそのまま活かされる。出来映え(GOE)もプラス3を付けたジャッジが多く、村元・高橋組の「一番最初にお披露目するエレメンツ」として、華やかなスタートを切った。
続く「パターンダンス」は、転向したばかりの高橋にとって、一番鍛えなければならなかった課題だろう。これはアイスダンスの基礎ともなる部分で、才能というよりは練習量が絶対的に必要になる。しかも今季の課題である「フィンステップ」はダンス課題のなかでは最も難しいと言われ、「弾けるシャンパンのように」「やりすぎなくらい」「極めて軽快に」行うこと、とされている。
転向したシーズンに「フィンステップ」とは、不運といっても良いくらいの難しさなのだが、やはり高橋は魅せてくれた。技術というよりも、心から表現する軽やかさで、見事にフィンステップを弾けさせたのだ。技術的に見るとタイミングは完全ではないのだが、表現としてシュワッとした爽やかさが全身から溢れる。新しいリズムダンスの誕生といっても良いくらい、不思議な感動が満ちていた。