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ミスしても不思議な魅力…村元哉中・高橋大輔組がデビュー 常識を変えるような“化学反応”が?
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byYukihito Taguchi
posted2020/12/03 17:03
リズムダンスは64.15点で2位、フリーダンスで93.10点の3位となり、合計157.25点で3組3位でデビュー戦となるNHK杯を終えた
「すごくゴージャスな身体に見えます」
もちろん、新しいエレメンツはゼロからのスタートとなる。高橋が村元を持ち上げるリフトは、重量挙げのように上半身の筋力がなければ出来ない。しかもレベルを取るにはリフトしながら片足で滑る必要もあり、足腰の体幹も必要になる。最初のうちは、陸の上で村元を持ち上げてもフラつくほどだった。
「シングルだと体重が増えないように食事を減らしたりするのですが、ダンスでは食べて食べて、筋肉付けて、肉体改造していく必要がありました」
もともと鍛えると筋力がつきやすい体質だったことも幸いしたのだろう。秋にはすっかり見違えるような身体に変化した。コーチのマリーナ・ズエワが「ダイスケは肩の筋肉がついて、ウエストは細く絞られ、すごくゴージャスな身体に見えます」と褒めちぎるほどだ。
別名“氷上の社交ダンス”
プログラムは、初めはフリーダンスを作り、さまざまなエレメンツを練習。リズムダンスは9月に作り終え、練習を重ねた。しかし初披露のNHK杯が近づくにつれて、新たな課題が現れた。それは、“アイスダンスの作法”だった。
アイスダンスは、別名“氷上の社交ダンス”。つまりアイスダンスでデビューというのは、まるで初めてお城の舞踏会に招待されたかのように、社交界デビューを果たすことなのだ。舞踏会では歩き方や挨拶の仕方、立ち姿勢などの礼儀作法があるのと同じように、アイスダンスでは試合の演技中以外にも、さまざまなマナーがある。
シングルなら、公式練習で公の場にいたとしても、曲をかけて演技する時以外はオフの状態。「疲れた」という表情を見せたり、猫背になってタラタラと滑る瞬間があっても、特に問題はない。しかしアイスダンスでは、氷に降りた瞬間からすべてが演技なのだ。
そしてとうとう11月26日、NHK杯の公式練習初日を迎えた。この日はまだ一般客は入らないが、テレビカメラが入る。2人は緊張の面持ちで、初めての“氷上の舞踏会”への一歩を記した。