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復権を期す名門、順天堂大学と中央大学。スーパールーキーの“花の2区”抜擢はあるか。 

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箱根駅伝2021取材チーム

箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

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posted2020/12/09 11:01

復権を期す名門、順天堂大学と中央大学。スーパールーキーの“花の2区”抜擢はあるか。<Number Web> photograph by JMPA

箱根駅伝予選会で順大・三浦は日本人トップ通過の快走(左)。吉居も中大の2位通過に大きく貢献した。

全てのタイム設定を見直す

「前回の箱根駅伝ではハイペースの展開に出遅れてしまいました。昨季は、全日本ではある程度のハイペースで走れたのに、箱根駅伝では守りに入ってしまった……。そこが反省点でした。

 そこで、今季は全ての設定を見直しました。厚底シューズを履く場合は特に。例えば、ハーフマラソンで5kmを14分30秒で入ったら、今までであれば“速い”と思っていたと思うんです。でも、14分30秒台でも“速い”と思わないように、意識レベルを変えていきました。練習に関しては、そんなに大きくは変えていないんですけどね。意識が変わったというのが一番だと思います」

 好調の要因に関して長門は意識の変化を強調するが、従来のシューズと厚底シューズを履いた時との違いを計算した上でタイムを設定して練習を行うなど、その裏には緻密な取り組みもあった。

 しがらみにとらわれない指導法とは裏腹に、箱根駅伝での長門の采配は“正攻法”と言える。

 監督として初采配となった第93回大会は、見事に4位と躍進を果たしたが、前年と同じ区間に経験者を起用した区間が6区間もあった。もちろん例外もあるが、連続で同選手を同区間に起用する傾向にある。

 今大会で言えば、前回の山の経験者が、上り、下り共に残っているのはアドバンテージと見ていいが……。

「手応えはまだまだ。箱根駅伝に向けてはそこが鍵になってくるなと感じています」

最大の注目、スーパールーキー・三浦龍司

 前回5区の真砂春希(4年)、6区の清水颯大(4年)の連続起用は明言せず、全日本大学駅伝後に実施した恒例の伊豆大島合宿で起伏対応の見極めを再度行ったという。

 また、23km以上の距離がある9区、10区には、箱根駅伝の王道どおりに、3年生、4年生の上級生を起用することが多い。もっとも、この3年間はこの2区間で二桁順位が続いている。かつて“復路の順大”の異名をとったように、ここに強力な選手を配することができるかどうかは、ひとつ鍵になってきそうだ。

 今回、最大の注目は何と言っても、スーパールーキー・三浦龍司の起用法だろう。7月に3000m障害で37年ぶりのU20日本記録を打ち立てた逸材は、マルチに活躍。箱根駅伝予選会では、男子マラソン日本記録保持者の大迫傑が保持していたU20日本最高記録をも塗り替えた。2016年のリオ五輪に現役学生として出場した先輩の塩尻和也(現・富士通)は、1年時から4年間、花の2区を任されている。長門監督は「その時の状況次第ですね」とほのめかす程度に留めたが、三浦の2区抜擢もありそうだ。箱根駅伝予選会では、初めてのハーフマラソンながら、冷静なレース運びで、日本人1位でフィニッシュしているだけに、2区でも十分に区間上位で走る力はある。

 三浦の他にも、石井一希、内田征冶ら強力なルーキーが、2年生にも三浦とWエースを成す野村優作や伊豫田、西澤侑真といった力のある選手がおり、下級生の戦力が充実している。順大が箱根駅伝で総合優勝したのは、長門や、初代“山の神”と称された今井正人(現・トヨタ自動車九州)が大学4年生だった2007年の第83回大会が最後だが、若い選手が多いチームだけに、今後が楽しみなチームだ。もちろん今回も。名門が本格的に復活の狼煙を上げる大会になりそうだ。

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