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FA移籍の裏で「人的補償」はいつも切ない 意外と活躍する選手もいるが…
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/11/30 12:35
巨人にとって24人目となるFAでの獲得選手、野上亮磨。人的補償で西武が誰を選ぶか、また世を騒がせることだろう。
FA移籍でやってきて人的補償で去る切なさ。
巨人の選手が10人と圧倒的に多いのは、FAで他球団の選手を最も多く獲得しているのだから当然のことだ。
人的補償の選手を右に記したFA選手と比較すると、さすがに小物感がある選手が多いのは否めない。金銭+人的補償選手でFA選手を手放すのだから、致し方ないところだ。
しかしなかには、江藤智、工藤公康、藤井秀悟、鶴岡一成のように、自身が過去にFAで移籍しながら「人的補償」で移籍した大物選手もいる。
プロテクトリストを作るときに、移籍してきた外様選手よりも、生え抜き選手を囲おうとするのが人情ではあろう。しかし、FA移籍でやってきて人的補償で移籍するのは、おのれの凋落を肌身に感じるようで、なかなか厳しい体験だ。
今を時めく日本一の大監督、工藤公康も過去にはこんなつらい体験をしているのだ。野球殿堂入りした選手で「人的補償」になった経験があるのは工藤だけだ。
どうもFA移籍や人的補償の話をすると、ことわざや四字熟語が頭に浮かんでくる。「因果応報」とか「栄枯盛衰」という感じか。
阪神から広島に移った赤松は大成功ケース。
中には全く無名で、「ま、一応とっておこうか」程度でとった「人的補償」が思わぬ活躍をしている例もある。
2007年の赤松真人は、阪神では同タイプの赤星憲広の陰に隠れてほとんど出番がなかったが、新井貴浩の「人的補償」で移籍した広島ではリードオフマンとして活躍。2010年にはホームラン性の当りをフェンスによじ登ってスーパーキャッチ。このシーンはマツダスタジアムに続くカープロードの壁画に「カープの歴史的なプレー」の1つとして描かれている。
赤松は今年初め、胃がんの手術を受け治療のため全休したが、球団は彼との契約を更新して支援を表明した。「人的補償」で移ってきた赤松は、すっかりカープの一員となった。「人間いたるところ青山あり」「住めば都」、彼自身も「人的補償」になって良かったと思っているのではないか。