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松山英樹、金谷拓実に続く“世界1位”も誕生 アマチュア学生が「出るからには優勝」と言える理由
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katuragawa
posted2020/11/27 17:00
11月25日付の世界アマチュアランキングで1位になった日体大・中島啓太。三井住友VISA太平洋マスターズでは一時、首位に立った
躍進の要因は場数と国外遠征?
金谷の1つ年下の米澤は、同世代の台頭について「プロの試合への出場機会が多く、慣れてきたのはあると思う」としたうえで、「自分たちは外国の難しいコースでゴルフをさせてもらってきた」と振り返った。ナショナルチームの国外遠征は今に始まったことではないが、海外ではプロツアーのレベルアップに沿うようにアマ向けのコースのセッティングも難化している。
彼がこれまでで一番「ヤバかった」と挙げたのが、オーストラリアの名門ロイヤルメルボルンでの体験。
「地面がコンクリートみたいに硬くて、100ヤード先のピンを狙うのに50ヤード手前にキャリーさせて転がすんです。バンカーも砂が石みたいに硬くて」
オーストラリアの一部のコースのバンカーは整備用のレーキが歯のある鍬(くわ)になっていて、砂同士で“溝”を作らせることもある。
「ボールが絶対に砂の間に埋まってスピンがかからない。グリーンの向こうのバンカーとを行ったり来たり。ただの落とし穴。ふざけてるっす(笑)」
日本のプロにとって彼の地での身近な競技会といえば、世界選抜と米国選抜の対抗戦プレジデンツカップ、あるいはワールドカップくらい。移動時間の短縮、情報化、デジタル化で世界が小さくなり、トレンドや過酷なゴルフ場を知るエリートアマチュアからすれば、日本ツアーで面食らうことも少ない。
“世界1位”中島啓太「出るからには優勝」
一昨年、アジア大会で日本男子は20年ぶりに優勝。個人でも金メダルを首にかけたのが中島だった。ジュニア時代に彼を指導していた吉岡徹治氏は当時から、積極的に海外の選手とのプレー機会を持たせた。
「最近では海外に『啓太は元気ですか? 今回は来ないんですか?』と聞いてくる同世代の選手たちがたくさんいます。みんなが彼のことを知っている」
ナショナルチームでは2015年に招聘されたヘッドコーチ、ガレス・ジョーンズ氏から準備の大切さ、ショートゲームの重要性を説かれ、コースマネジメントの重要性をたたき込まれてきた。
そして、中島自身「周りの目が変わってきたと思います」と環境の変化も汲み取っている。
「少し前まではツアーに出られるだけで『すごいね』と言われて、『予選を通過してね』と応援されていたんです。でもここ最近は『優勝して』って。自分も高校生のときまでは出られるだけで満足だったし、うれしかった。でも金谷さんがあれだけ活躍して、自分も優勝したいと思うようになりました。(各大会の)ローアマチュアへの興味、意識は変わってきている」
もうプロの試合であっても、「出るからには目標は優勝」。そう目標設定を変えた中島は11月25日時点で、日本勢では松山、金谷に続いて世界アマチュアランキング1位の称号を手にした。