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高木美帆、ケガで練習不足も圧巻の二冠! 表彰台はライバル小平奈緒と笑顔で
posted2020/11/12 17:01
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Tsutomu Kishimoto
コロナ禍の不安や負傷による調整不足を、圧倒的な地力でねじ伏せた。スピードスケートのシーズン開幕を告げる全日本距離別選手権が10月23日から25日まで長野市エムウェーブで行なわれ、高木美帆(日本体育大学職員)が大会2日目の女子1000mで4連覇、最終日の1500mで5連覇を飾り、2冠を達成した。1000m1分14秒21、1500m1分54秒81はいずれも自身の持つ大会記録を更新する圧巻の滑りだった。
「今の体の状態でどうやったら速く滑れるかを模索して、ギリギリで見つけられた感じです」
夏場に右ひざが痛み、ナショナルチーム合宿では別メニュー調整が続いた。練習不足は否めず、体力面で不安を抱えたままの開幕。それでも勝利にこだわった。4種目にエントリーしていたが初日の500mと3000mを回避し、世界記録を持つ1500m、世界歴代2位の記録を持つ1000mに絞って臨んだ。
小平と表彰台で笑顔を向け合った
レースでは2種目とも持ち味である後半の強さを発揮した。1000mではラスト1周をただ1人28秒台で回り、自身が持つ大会記録を0秒65も縮めた。ともにこの種目で平昌五輪の表彰台に上がった小平奈緒に1秒41の大差をつけての優勝。初日の500mで6連覇を達成していた2位の小平とは表彰台で笑顔を向け合い、健闘を称え合った。
「ラスト1周で足に来た」という最終日は豊富な経験でピンチを乗り切った。1500mは中学3年生で出た'10年バンクーバー五輪の国内選考会で1位になり、'18年平昌五輪で銀メダルを獲得し、'19年3月には1分49秒83の世界記録を樹立している、高木の代名詞といえる種目。ここでも上がり1周を全体トップのタイムでまとめ、「足が止まり始めてもロスを最小限にするための滑り方をつかみ始めた」と収穫を挙げた。
「良い集中でレースに挑めた。どういうモチベーションが自分を高めるかという、次につながる発見もあった。充実した大会になった」
今年は例年と異なり、年内に予定されていたW杯が中止となっているため、11月に帯広や八戸で開催される全日本選抜に出る予定だ。曇りのち晴れ。また一段階上に行った高木の滑りが、全国各地のスケートファンを楽しませてくれそうだ。