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小平奈緒、5年ぶりの敗戦の意味「自分が目指してきたのは金メダルではない」
posted2020/12/05 11:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
JIJI PRESS
勝利はアスリートを輝かせる。一方で、敗北によってアスリートが別の輝きを見せることもある。ときに後者は、その人の魅力をより深く掘り起こす。
ワールドカップ37連勝。平昌五輪金メダル。数々の勝利を重ね続けてきたスピードスケートの小平奈緒(相澤病院)が、11月13日に北海道の明治北海道十勝オーバルで行なわれた全日本選抜競技会帯広大会の女子500mで2位になった。
38秒28で優勝した郷亜里砂(イヨテツクラブ)から0.02秒差の38秒30。小平が国内大会のこの種目で敗れるのは15年全日本スプリント選手権以来5年ぶりという波乱は、各メディアで驚きをもって報じられた。
ただ、「負けた」という報道だけでなく、小平が冷静にレースを振り返ったという新聞記事が大半だったことは印象的だった。小平は敗戦の弁をこう述べていた。
「練習で調子が上がっていたのに、それを発揮できなくて残念でした。2度も手をつく大きな失敗をしてしまった。原因があると思うので、それを改善していくだけです」
5年ぶりの敗戦から収穫を得ていた
レースの映像を振り返ると、スタートからの100mを全体トップの10秒51で通過したものの、スピードに乗った第1コーナーの出口で左手をついて減速していた。
「第1カーブの入り口で、ブレード(の蹴り)が抜けたのか、靴が氷に擦ったのか、氷が壊れたのか、もともと氷に溝があったのか、分からないが体勢を崩しました。ただ、転ばなかったのは良かった。右足でリカバリーして、体をコントロールできていた」
5年ぶりの敗戦でも、そこから得られた収穫を具体的に語る様子が目を引いた。
今年10月にあった全日本距離別選手権(長野・エムウェーブ)。女子500mで6連覇を達成した小平は、高木美帆に続いて2位になった女子1000mのレースの後、このように語っていた。
「平昌五輪の前は連勝を重ねていたので、皆さんの中で『小平は勝ち続けている』というイメージがあると思うのですが……」