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平均球速135キロでもドラフト指名! ロッテ育成4位佐藤奨真の打てそうで打てない幻惑投法
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2020/11/10 17:03
ロッテから育成4位で指名された専修大・佐藤奨真。関東第一高校時代は甲子園も経験している
「今のまっすぐ? 変化球?」
佐藤を見つめるバックネット裏では「今のまっすぐ? 変化球?」といった声が関係者やスカウトからよく漏れた。それはただ単純に球速が遅いからではなく、変化球の曲がりが打者の手元に来るまで分かりにくいからだろう。
特にストレートとカットボールは見分けがつきにくい。ストレートは踏み出した右足が着地するまでに“間”があり、着地してからもすぐに腕は出てこず遅れて出てくるだけに打者は球速以上の差し込まれ方をする。カーブやスプリットにしても“ドローン”と曲がるのではなく、小さくベース付近で“キュッ”と曲がる。
球速を追い求めたこともあった
佐藤自身もそうした“間”が最も大きな武器だと自覚している。
下級生の頃は球速を追い求めて最速143キロまで到達した。だが、2年秋の1部、2部入替戦の2回戦で先発した際、3四球と2本の適時打を浴びて4失点。中央大打線から1アウトしか取れずに降板した。チームも1部復帰を逃し、「4年生最後の試合を自分が壊してしまった」と自責の念にかられた。
球速を追い求めるあまり、体の開きが早くなり、“間”が無くなった。打者にとってタイミングが取りやすくなり、制球も悪くなった。敗戦からそれを悟った佐藤は、その冬から原点回帰。「スピードはいずれ勝手につけばいい」と自身の生命線が“間”だと気づき、丁寧な投球を心がけていく。
すると、3年春には6勝を挙げて2部リーグの最高殊勲選手を獲得。駒澤大との入替戦でも1部復帰はならなかったが、1・3回戦とも先発として試合を作った。この秋も2勝3敗と思うように白星を積み重ねることはできなかったが、防御率1.77と安定した成績を残した。
「球が遅くても抑えられる理由は?」と単刀直入に聞くと「調子が悪い日でも必ず良い変化球があったりしてマウンドで上手く修正できるからですかね」と話した。