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平均球速135キロでもドラフト指名! ロッテ育成4位佐藤奨真の打てそうで打てない幻惑投法
posted2020/11/10 17:03
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
科学的なトレーニングや投球理論の進化により、「ドラフト候補」と呼ばれる投手の球速が150キロを超えることは珍しくなくなった。150キロを超えるスピードボールを持ちながらも、指名漏れする者だっている。
そんな昨今、極めて異例な存在がドラフトで名前を呼ばれた。ロッテが育成ドラフト4位で指名した専修大の左腕・佐藤奨真である。
ドラフト指名後の11月4日の登板では、球速表示が130キロに届いたのは数えるほど。等々力球場のスピードガンが「最大7キロも遅い時があった」と話すスカウトがいたが、ただ「7キロ」をプラスしたとしても佐藤のこの日の最高球速は137キロ前後。他の試合も観ても平均球速は135キロあたりだろう。
しかし、球速の数値は平凡ながらも、佐藤は全国から好素材が集まる専修大で2年時からエースを務め、育成選手からとはいえ、プロ野球選手としてのキャリアを始めようとしている。
佐藤の遅球に目をつけた福澤スカウト
早くから目をつけて最後まで注目し続けたのは、ロッテの福澤洋一スカウトだ。夏前に担当地区で気になる選手を伺った際には「球は速くないんですけど、なぜか抑えるんですよね」と既に佐藤を気に留めていた。
そして最終的に獲得検討を意味する調査書を提出したのもロッテのみだ。他球団が球速などを理由にリストから外す中、練習や秋季リーグを視察し「奥行きを生み出せるのが武器ですね。変化球のキレやスピードがつけばもっと良くなるでしょう」と指名に踏み切った。
“奥行き”とは何か? それを問うと「目の錯覚や感覚との違いですね。ここに来ると思っても来ない」と福澤スカウトは答えた。ピッチャープレートからホームベースまでの距離は18.44m。その中で佐藤は巧みに勝負ができるのだ。