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日本代表オランダ遠征は「何度も無理かも、と」 反町技術委員長&田嶋会長が明かす舞台裏
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2020/10/30 17:00
植田直通の劇的なゴールで2020年初勝利を飾った日本代表。しかしこの試合を開催するにあたっては困難の連続だった
同時進行で会場の選定も進めて
さらに同時進行で、会場の選定も進められた。
オランダ国内のいくつかのスタジアムに連絡し、条件面を確認しながら、感触を掴んでいく。これまでの海外遠征ではJFA職員が渡欧し、各スタジアムを回って交渉に臨んできたが、今回は事前に視察することができない。
「ですから、エールディビジのクラブにエージェントやプロモーター経由で当たって交渉するしか、会場選定の方法がなかった。それで条件面を検討したり、レスポンスの内容で協力的かどうかを吟味して、エージェントやプロモーターにも『どう? やりたそう?』って感触を確認して」
こうして絞り込んだのが、オランダ第4の都市、ユトレヒトだった。
日本代表は岡田武史監督時代の2009年にオランダ遠征を行なっている。その際、ガーナ代表と対戦した会場がユトレヒトだった。
事前に視察ができないわけだから、会場は勝手を知るところがいいはずだ。ましてやユトレヒトは現在、JFA欧州駐在強化部員を務める藤田俊哉が現役時代に在籍した経験がある。そのつながりもあったのではないか――。
そう想像したのだが、平井はきっぱりと否定した。
「実は、まったく関係ありません。今回は1カ月後には試合が迫っているし、新型コロナウイルスのプロトコルを実施したり、PCR検査を行なったりと、チャレンジングなことが多かったので、協力的なところじゃないと難しい。いくつか乗り気のクラブ、スタジアムはあったんですけど、最終的に『ぜひ、やりたい』と言ってくれたのが、FCユトレヒトだった」
土壇場でオランダ協会の承認が降りない
なんとか対戦相手と会場の目処が立ったが、スムーズに正式発表できたわけではない。土壇場でオランダサッカー協会の承認が降りなかったからだ。
原因は齟齬にあった。オランダ協会はカメルーン、コートジボワールの選手たちがアフリカからやって来ると勘違いしていたのだ。
「こちらの説明が拙かったのかもしれません。『カメルーンもコートジボワールも全員、ヨーロッパにいますから』と両チームのメンバーリストを示しながら念を押して、ようやく承認してもらいました。そこで2日間ほどロスしてしまった。承認が取れないと、スタジアムとの契約もできないですから、後手後手に回ってしまって、苦しかった」
こうして9月16日、カメルーン、コートジボワールとオランダのユトレヒトで対戦することを正式に発表するに至った。