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日本代表オランダ遠征は「何度も無理かも、と」 反町技術委員長&田嶋会長が明かす舞台裏
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2020/10/30 17:00
植田直通の劇的なゴールで2020年初勝利を飾った日本代表。しかしこの試合を開催するにあたっては困難の連続だった
ヨーロッパで主催試合を開催できないか
9月に組まれていたW杯2次予選が延期になった際は、インターナショナルマッチウイークそのものが21年6月に移ったため、仮に9月に代表戦を行なったとしても、各クラブには選手の派遣義務がなかった。
しかし、10月と11月のケースはそれとは異なっていた。W杯予選が延期されただけで、インターナショナルマッチウイークはそのまま。つまり、親善試合を組んだ場合、代表チームは各国リーグに散らばる選手たちを呼ぶことができる――田嶋が確認したのは、このことだった。
むろん、依然として人々の生活は新型コロナウイルスに侵されたままである。感染拡大防止のためのプロトコルは各国どころか州によっても異なるため、希望する選手全員を招集できるわけではない。しかし、それでも日本代表の活動再開に光が差し込んだのは確かだった。
そこで田嶋に、あるアイデアが浮かんだ。
ヨーロッパでJFA主催のゲームを開催できないものか――。
「ただ、簡単じゃないと思ったよ」
対戦相手を日本に招くのが困難な情勢だから、日本国内でホームゲームを行なうことは難しい。しかし、過去にもW杯に向けた準備としてヨーロッパで試合を開催したことがあるから、決して不可能ではないはずだ……。
そう思い立った田嶋はすぐさま反町の電話を鳴らし、「やれるけど、どうする? 森保(一)監督とすぐに話をしてくれるか」と語りかけた。
会長から連絡を受けた反町は「なるほど、その手があったか」と一旦は感心したものの、本当に試合を組めるかどうかは疑問だった。
「もちろん、森保もやりたいと言うだろうと。ただ、簡単じゃないと思ったよ。日本代表というからにはベストメンバーを集めなきゃいけない。ただ、Jリーグの選手をヨーロッパに連れて行くと、帰国後2週間、自主待機することになるから難しい。じゃあ、ヨーロッパでプレーする選手を23人呼べるのか。それに、コロナ禍の今、ヨーロッパで試合をやらせてくれるところがあるのか……。いろんな弊害があるのは間違いないから、これは難しいだろうなと」