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【J1新記録11連勝】川崎・鬼木達監督インタビュー“ピッチに崩れ落ちた”J1参入戦で学んだこと
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2020/10/29 11:03
10月18日の名古屋グランパス戦で、中村憲剛とグータッチをかわす鬼木監督
苦境は己を成長させる絶好の機会
フロンターレで絶対、活躍してみせる――。鬼木のハラは固まった。
与えられた背番号は7。
期待の大きさのあらわれだった。
しかしながら新しい出発は彼にとっても、クラブにとっても苦しいものとなる。2000年シーズン、鹿島からは鬼木のほかにも奥野僚右、鈴木隆行、マジーニョが加わるなど大型補強に踏み切った。
ほかにも多くの選手を補強して臨んだシーズンだったが、選手を大きく入れ替えた影響もあってうまくかみ合わず、結果も出ない。監督交代もあってゴタゴタは収まらず、チームの不協和音がささやかれるようになった。
フロンターレの伝統も理解しているし、新しくチームに入ってきた選手たちの「変えていきたい」とする気持ちも分かる。鬼木は苦しんだ。
「J1でやってやるぞっていう思いは一緒でも、どうやって進んでいくべきかなかなか一致できない。みんな間違っていないんだけど、どうやったらうまくいくのかが見えない。チームがこういうふうになると試合でも勝てないんだなって。そこが一番感じたところかもしれません」
言うべきことを言い、やるべきことをやる。
いや、それだけでは十分ではないのだと身をもって知ることになる。両方を知る立場から融合を図ろうとしたものの、できないもどかしさ。己の力不足を思い知った。
周りは自分に何を求め、周りのために何が自分はできるのか。かつそれを成功させることができるくらいの説得力を備えなければならない。
苦境は己を成長させる絶好の機会。
鬼木達にリーダーとしての自覚が芽生え始めていた。
(中編に続く)