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【J1新記録11連勝】川崎・鬼木達監督インタビュー“ピッチに崩れ落ちた”J1参入戦で学んだこと 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byGetty Images

posted2020/10/29 11:03

【J1新記録11連勝】川崎・鬼木達監督インタビュー“ピッチに崩れ落ちた”J1参入戦で学んだこと<Number Web> photograph by Getty Images

10月18日の名古屋グランパス戦で、中村憲剛とグータッチをかわす鬼木監督

延長Vゴールを決められて、鬼木もピッチに崩れ落ちた

 魂のボランチ。

 プレー同様、言動もチームのためなら遠慮はしない。フロンターレの色を尊重しながらも、「なあなあにはしなかった」。勝負に対する要求だけは周りにも求めようとした。鬼木が発する熱によって、チームの雰囲気は明らかに変わっていく。

 彼には忘れられない試合がある。

 1998年11月19日、JFL2位となって勝ち取ったアビスパ福岡とのJ1参入決定戦1回戦。勝てば2回戦に進めるが、負ければ新設されるJ2に回ることになる。

 J1チームのホームでの一発勝負であり、フロンターレにとっては有利とは言えない条件だった。

 それでも2-1とリードして後半アディショナルタイムに入る。J1は、もう目前だった。しかし土壇場で同点に追いつかれ、延長Vゴールを決められてジ・エンド。フルに戦った鬼木もピッチに崩れ落ちるしかなかった。

「勝敗を分けるのは一瞬なんだなって」

 大きな人生訓を与えてもらったという。

「参入戦に懸ける思いで1年やってきて、目標を持って取り組むことの大切さを学べました。あの試合に向けてどんどんチーム力が上がっていって、そういうときのパワーを凄く感じましたから。

 ただそれでも勝てなかった。勝敗を分けるのは一瞬なんだなって、特に大きな試合ではそうなんだなって余計思いましたよね。アントラーズはどんな試合でも平常心で戦える。そこが大きな違いだなって」

 鬼木に対するフロンターレの評価は高く、残留を打診された。しかし彼自身、J1に行こうがJ2に回ろうが結果は関係なく、「もう一度アントラーズで勝負したい」。そのため1年でチームを離れた。

 ただまたしても鹿島ではレギュラーを奪えず、逆にJ1昇格を決めたフロンターレから完全移籍でのオファーが届く。

【次ページ】 苦境は己を成長させる絶好の機会

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