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EL衝撃デビューでもリーグ戦は不発?…久保建英が「エメリ監督の要求以外にしていた」“2つの工夫”
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byDaisuke Nakashima
posted2020/10/26 17:01
直前のヨーロッパリーグ(EL)で今シーズン公式戦初スタメンを飾り、1得点2アシストの結果を残した
相手の守備を崩すのが簡単でないのは、エメリ監督ももちろん理解していたのでしょう。4-3-3のシステムで、久保とモイ・ゴメスの両ウイングを外に張らせるのではなく、内側にポジションを取らせて相手のセンターバックとサイドバックの間に立たせました。いい状態で守らせないための戦略を練っていたわけです。
この試合の立ち位置はあくまでも一例で、エメリ監督は対戦相手に応じた細かな約束事を選手に課しています。久保に対してはどの試合にも共通するタスクとして、「ペナルティエリア内へいい形で入っていく・ポゼッションをしているときにボールを失わない・守備面の改善」の3つを要求しています。
監督の要求を遂行しなければ、選手はピッチに立てません。とはいえ、監督の要求どおりにプレーするだけでは自分の良さを示せない。プラスアルファとして自分の色をいかに出していくか。その配分は答えのないもので、就任1年目の監督のもとでは手探りになりがちです。それでも、カディス戦の久保は迷いを感じさせず、とても工夫を凝らしていました。
あえてシビアな場所にポジションをとって……
カディスの堅牢な守備組織を前にしたビジャレアルは、敵陣でスペースを見つけることが難しく、パスを受けても時間の余裕がない状況でした。そのなかで久保は、攻撃側からするとシビアな場所にポジションを取り、ボールを引き出していました。パスが出てこない場面もありましたが、守備側がストレスを感じるポジションをつねに探していたのです。
パスを引き出すだけでなく、タイミングを見定めて仕掛けてもいた。38分には右サイドからドリブルで持ち込み、3人の相手選手が自分に意識を向けた瞬間にゴール前へクロスを送りました。前半終了間際の44分には、右サイドの深い位置からタテへ持ち出し、右足でクロスを入れました。相手の守備ブロックを崩すアクションを、チーム内でもっとも多く起こしたのは久保だったでしょう。オンザボールの局面でチームの誰よりもリスクを冒し、相手守備陣にカオスを生み出していました。